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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
7章 人質姫のもう一つの生活
40/180

増えるお友達

「それで、人質な側室を見て、満足されましたでしょうか?」


 ぴく。

 また眉毛が動く。

 神経質そうな方だけど、眉根が寄せられていてもその顔は綺麗なままだ。

 男でそんなに綺麗なのって、反則だわ。



「……あの畑を、見ていた」

「はい?」

「あそこが畑になる前から見ていた。お前が土をおこし、タネをまき、あるいは球根を植え、水を撒く姿を、毎日ではないが眺めていた」


 ……覗き見?


「お前は気付いているか? 本宮の目の前の花壇と、お前の畑の成長の違いを」

 ギルバート様は身を乗り出してくる。

 近い近い。


「……違いますか?」

 少し後ろに姿勢を直す。

「違う!お前が育てた方は成長速度が全然違う!なんだ、あのトマトは!もう食えそうじゃないか」

「あら、私ってば庭師の才能があったのかもしれないですね」


 ふっ、

 ギルバート様に鼻で笑われた。

「庭師の才能はないだろう。植物は育っているが、なんだあのセンスのない花の配置は」

 いいですけど……失礼な人ですね。

 ちょっと口を尖らせる。


「そう膨れるな。庭師の才能はないが、きっと癒しの才能はある」

「なんですか?それ」

「ずっと見ていたと言っただろう。ここ、離宮だけ時間の流れがおかしい気がする。例えば、ここの侍女だ」

「ジュディがどうかしましたか?」

「普通の侍女より仕事が多いはずなのに、いつも元気だ」

 ……それは時間の流れではなく、ジュディの体力の問題なのでは……。


「それにこの菓子だ。うまい!」

「それはありがとうございます」

 褒められれば単純に嬉しい。

「力が湧いてくるようだ」

「はあ……」


 ギルバート様は身を乗り出して力説していた姿勢を元に戻す。

「つまり、何がいいたいかと言うと、」

「言うと?」

 私がギルバート様の目を覗き込むと、ギルバート様は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

「お前と話したかったんだ」


 …これは…なんと可愛らしい……!!

 美少年が照れて赤くなって口を尖らせる。

 これ以上の破壊力を見たことはない。

「あの、その前に焼いたクッキーもありますのよ。召し上がりますか?」

 ギルバート様は、顔を赤くしてそっぽを向いたままで答えた。

「…食う」


 私はいそいそと戸棚にしまってあったクッキーを取り出してギルバート様の元へと急ぐ。


「さあ、どうぞ。召し上がれ」

「あぁ」

 ギルバート様は不貞腐れたようにそっぽを向いてクッキーを食べた。


「美味しいですか?」

「あぁ、うまい」

「また、焼いておきますから、食べに来てくださいね」

 私の言葉に反応して、ギルバート様は勢いよくこちらを向いた。

「いいのか!?」

「もちろんですよ」

「こんな、覗きのようなことをしていたわたしだぞ」

「だって、ギルバート様は私とお話ししたかっただけでしょう?そんなこと、気にしません」

 微笑んで、紅茶のおかわりを注ぐと、ギルバート様は嬉しそうな表情をした。

 でも、すぐに怒ったような顔をして。

「お前もわたしと話したいんだな。よし、また来てやる」

 と、腕を組んで偉そうに言った。



 こうして、私のお友達は少しずつ増えて行く。


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