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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
5章 新しい生活
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動く時の服装は

 

 ジュディが材料を持ってきてくれた次の日、早速クッキーを焼いてみた。

 マリーに教わってお菓子は少し作れる。


 ココアを使ってマーブルのクッキーを作ることにした。

 ココアを使うのは、フレッド様に対する嫌味だ。


 ジュディとふたりでおしゃべりしながらのお菓子作りはとっても楽しかった。

 クッキーだけではさみしいね、とジュディと話し、パウンドケーキも作ってみた。

 それに、木苺を煮て作ったジャムを添えて。


 午前中にお菓子を作り、試食をしていたけれど、ついつい本格的に食べ始めてしまいティータイムに突入した。これが昼食になりそうだけど。


「なんか平和ね。こんなのんびりと人質やってるのって、きっと世界中探しても私しかいないのではないかしら?」

「姫様……。ほんとに姫様ってのんきなんだから」

 呆れながらもジュディの口には、どんどんクッキーが入って行く。

「でも、マリーやアーサーの様子が気になるわね。ボナールへのお手紙って、届けてもらえないのかしら」

「そうですね。わたしも母さんには姫様が元気でお過ごしの様子を伝えたいですし……。元気でお太りの様子も伝えたいですし……」

 はっ、と口に運びかけたパウンドケーキをじっと見つめた。


「……私、太った?」

「ええ!まだランバラルドへ来て10日も経っていませんが、頬のあたりがふっくらとしてきましたよ」

 ジュディは嬉しそうに言うが、太ったと言われて喜ぶ乙女はいない。

「……おやつ、控えようかな……。あ、ケーキにジャムをつけるのやめれば少し抑えられるかも!」

「姫様、いいんですよ。もっともっとお太りになられてください。幸せ太りをして、いつかボナールに帰った時に、馬鹿国王と馬鹿王妃と馬鹿王女に見せつけてやりましょう!」

 馬鹿馬鹿と連呼されて、つい、おかしくなって笑ってしまった。

「そうね。このまま栄養をつけて、太って、国王を踏み潰すくらいになろうかな」

 口元で止めていたケーキを口の中に運ぶ。

 うん。いくつ食べても美味しい。


「これだけ美味しいお菓子ですもの。フレッド様も参った、と言ってくれるかしら」

「言ってくれますよ。姫様が一生懸命作ったお菓子ですもの。お茶の片付けを終えたらお届けに行ってきますね。それに、姫様が作るお菓子を食べると、なんか疲れが取れる気がします。程よい甘さがいいんでしょうね。仕事の合間に食べたら、きっとフレッド様のお仕事も捗りますよ」


 ジュディはさっと片付けをすると、籠いっぱいにお菓子を入れて、本宮へと向かって行った。

 フレッド様はほぼ毎日、本宮の王太子の執務室でお仕事しているらしい。


 残された私は、暇を持て余し、散歩に出ることにした。

 また木苺発見の時のように、何かいいことあるかもしれないし。


 ドアを開けて外に出ると、今日もいいお天気で気持ちのいい風が吹いていた。

 鳥もさえずり、蝶々も飛んで花々を渡り歩く。


 また裏の木々が生えているあたりに行こうとして、足を止める。

 木苺の他にも何かなっていないかなと思ったんだけど、これだけ広い土地があるんだもの。

 自分で育てればいいんじゃない?

 離れのお邸の横から裏手にかけては、平面で大きな岩もなく、植物の栽培に良さそうな土地がある。


 これは…耕すしかないでしょう!

 いそいそとに戻り、スコップを探し出す。

 大抵のものは揃っているこの建物の中には、ちゃんとスコップもあった。


 急いで戻り、スコップで土を掘り起こしてみる。

 そう硬くもなく、掘ることができた。

 夢中になって土いじりをしていると、ドレスの裾がかなり土で汚れていることに気がついた。


 ドレスじゃ動きにくいし汚れるし…。

 何か動きやすい服は持ってきていたかしら。


 スコップを置いて、一旦建物の中にもどる。

 クローゼットの中を見るけど、そもそも王女に動きやすい服なんてあるわけがない。

 どんなに質素な私の服でも、くるぶしまであるドレスなのだ。


 せめて、ジュディのお仕着せみたいな服が欲しいな。

 ジュディはランバラルドに来てから、ランバラルドのお城のメイドさん達が着ているお仕着せで仕事をしている。

 ……あれ、借りれないかしら。


 ジュディは、マリーがこちらに来ることを想定して、侍女は2名で申請をしていたから、お仕着せも2名分支給されていた。

 確か、リネンが置いてある棚に何着か無造作に置かれていたような…。

 ごそごそ探すと、私の記憶通り、余分なお仕着せが見つかった。

 汚れたドレスを脱いで、お仕着せを着てみる。

 スカート丈は膝下くらいだし、ウエストをリボンて締めているのでヒラヒラせずに動きやすい。

 色も黒だから汚れも目立たない。


 お仕着せ、素晴らしい…!

 調子に乗ってエプロンもつけ、髪も両側に三つ編みにして垂らしてみた。

 鏡の前でクルッと回ってみる。

 まあ、かわいい(と自分で言ってみる)メイドさんの出来上がりだわ!


 さあ、これで思う存分、土いじりができるわね。

 すぐに畑にできるように雑草を抜いておこう。

 そして、ジュディが帰ってきたら、すぐに王宮に種か苗を申請してもらおう。



 そして私はカンカン光る太陽の下、草むしりに熱中した。


 熱中し過ぎて貧血を起こし、クラクラしたところにジュディが帰ってきて悲鳴を上げられるのは、もう少し先のお話。

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