クッキーだって作れます!
フレッド様が鍵を取り出し、ジュディに渡した。
「鍵はこれと、マスターキーを王宮で管理しているだけだから、プライバシーは守られるよ。さ、中に入ってみて」
フレッド様に促されて二階建ての可愛いお邸の中に入ると、白い壁にレースのカーテンの、とても素敵な内装の部屋だった。
ジュディと二人であちこち見て回る。
キッチンもついてるし、浴室も広い。
主寝室のベッドは天蓋付き。
「わあ…お姫様のベッドみたい」
昔絵本で読んだお姫様の部屋にそっくりなここが、私の部屋でいいのかしら…。
ベッドにかかっているレースも、細かい刺繍が入っていて、とても高価なものだとわかる。
「お姫様のって、シャーロットちゃんお姫様じゃん」
フレッド様がくすくす笑う。
「そ、そうですけど、こんなところを私の部屋にしていただけると思っていなかったので…」
もじもじと指先をいじりながら言い訳をすると、フレッド様が私の頭を撫でた。
「おっと、ごめん。レディにすることじゃなかったね。可愛くてつい…」
思わずやってしまった行為なのか、フレッド様が赤くなる。
「じゃ、何かあったら王太子用の執務室へ伝言を頼んで。あと、食事は本宮から運ぶこともできるし、材料だけ取り寄せてここで作ることもできるよ」
えっ、料理ができるの?
普通の王女様は料理なんてできないが、私はマリーに習っていて多少できる。
将来何が役に立つかわからないからと、マリーは言っていたけど、こういうことだったのね。
「ここで作ります。慣れないのでちょっと大変そうだけど、ここで作ったものを食べたいです」
「まるでシャーロットちゃんが作るような口振りだな」
「私が作るんです」
「ムリムリ。王女様が何言ってんだよ。苦労ひとつしたことのない王女様が料理なんて作れるわけないだろ。ジュディちゃんの方は料理得意なの?」
ばーんっ、と胸を張ってジュディが答える。
「もちろんです!姫様は暖かいお食事をあまり食べられなかったんです。ここで作れるなら、熱々のシチューとか、サクサク食感の焼き立てのパンとか、姫様に食べさせてあげられます!!」
「あぁ、そうだね。王族って毒味役とかがいて冷めた食事しか食べられないもんな」
…私の場合は、王族みんなと一緒に食事ができず、塔の上まで運んでもらっているうちに冷めただけだけどね。
「シャーロットちゃん、ジュディちゃんに美味しいもの作ってもらいなよ」
「ですから、私も作るって言ってるじゃないですかっ!」
「美味しいもの食べたかったらやめときなって。王女様には無理だよ。オレ、貴族の女の子に手作りのクッキーという名の炭を食べさせられたことがあるんだ。その子はココアクッキーって言ってたけど、あれは絶対に炭だった」
その時の味を思い出したのか、フレッド様はハンサムなお顔を苦々しくされていた。
「でも、その方は一生懸命作られたのではないですか?私も料理する時は一生懸命作ります。絶対に美味しいものを作ります!!」
握りこぶしを両手で作り、力説する私の頭をフレッド様はくしゃりと撫でた。
「じゃあ、そんなに言うんならオレにも食べさせてよ」
「もちろんです!差し入れいたしますわ!」
ふっ、と笑って「待ってる」と言われた私は、がんばって作ってフレッド様に差し入れをしようと心に誓いました。
そして「オレが間違ってた。貴族の娘が作っても美味しいものは美味しい」と、言わせるのです!!
そうして、フレッド様は爽やかな笑顔を残して去って行きました…。
彼も嫌な役が終わって、肩の荷が降りたことでしょう。




