白い壁の蔦の絡まる
サラサラと、婚姻誓約書にサインをする。
他の書類も一応中身を読んでから、次々にサインをしていった。
「フレッド様、こちらで終わりですか?」
淡々とサインをする私を口を開けて見ていたフレッド様は、私の声掛けで我に返ったようだった。
あっさりと婚姻誓約書にサインをしたことが衝撃的だったらしい。
「ん?あぁ、書類はそれで終わり。あとは、侍女の申請書なんだけど、ボナールからの申請では侍女は二人だけだね。少ないけど大丈夫?ランバラルドから侍女を何人かつけようか?」
ん?
二人?
「フレッド様、侍女はジュディひとりで」
ひとりです。と言おうとしたところに、ジュディが顔を上げてフレッド様の方を向いた。
「はい。二人です!二人で大丈夫です!」
「ジュディ、侍女はジュディ一人しか来ていないけど…?」
「私の母が一足遅れてランバラルドに来る予定です。後からだと、滞在許可が下りないかもしれないので、出しておいたんです」
「だから、ダメだって言ったでしょ。マリーはもう年なのだし、アーサーがあちらにいるのだから、あちらで暮らした方が幸せよ。あなたもしばらくしたらボナールに帰るのよ」
「後のことは後で考えます。とにかく、母も来るっていってましたから」
「ジュディ、だから」
「ストップ!ふたりとも、オレの話も聞いてよ~。内輪のことは後でゆ~っくりと相談して」
あ、フレッド様のこと忘れてた。
ほほほほほ。
愛想笑いを向けてみる。
「…シャーロットちゃん、ゴマすらなくてもいいから。それじゃあ、侍女は当面二人でいいってことだね?生活してみて、人手が足りないようなら言って。手配するから。あとは、何か欲しい物や足りない物があれば、ジュディちゃんだっけ?キミが管理室まで申請にきてくれれば用意されるから。他に質問ある?なければ部屋へ案内するけど」
「あの…王太子様にはやっぱりお会いできないんですか…?」
私の言葉に、フレッド様は眉根を寄せた。
「ごめんね、シャーロットちゃん。王太子は本当はキミのことを側妃として縛りつけたくはなかったようなんだ。でも、王太子はキミを側妃にすると決めた。そして、側妃となったキミが王太子と仲良くしてしまうと、王太子の持つしがらみがキミにも関わってくる。だから、王太子はキミに会わない」
「わかりました」
これからお世話になるんだからご挨拶くらいしたいと思ったけれど仕方ないわね。
それから、私とジュディはフレッド様に案内されて少しお城の中を歩いた。
たくさんの肖像画が飾られた回廊を歩く。
ここには歴代の王様方と、そのご家族の肖像画が飾られているそうだ。
そこを抜けて歩くと、お城の外側には一角がガラスの壁と鉄骨で作られた小部屋があった。
これは小さな温室で、その温室の中に植えられた木には冬でも花を咲かせているものもあるという。
王妃様はこちらにテーブルを用意してお茶会をやることもあるらしい。
温室も抜けると、城内の庭へ出る。
庭は庭で噴水があり、その傍にはバラの木のアーチがあり、白いバラ・赤いバラ・ピンクのバラがセンスよく配置されていた。
その広い庭を抜け、しばらく歩くと白い壁に緑の蔦が絡まるお邸が見えてきた。
「シャーロットちゃん、見えてきたよ。白くて可愛いだろう。あの離れがシャーロットちゃんたちが住むところになるんだ。中も、若い女の子が好む部屋になるように家具からカーテンから全部可愛いものに取り替えてあるからね」
こじんまりとしたお邸は、造りはとても繊細で気品あふれるお邸でした。
人質が住まわせてもらうにはとても贅沢で。
でも、側妃が住むにはあまりにも本宮から遠いお邸でした。




