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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
4章 ランバラルドへ到着
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ランバラルド王との謁見

 門をくぐり、ランバラルドの使用人から指示されたところに馬車を停める。


 馬車から顔を出すと、立派な身なりをした紳士が出迎えてくれた。

「ボナール第二王女殿下。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 馬車から降りて、私は一度ルドルフを振り返った。

「護衛の任務、ご苦労様でした。帰りの道中も気をつけて」

「殿下が心安らかにお過ごしになられますよう、心よりお祈り申し上げます」

 ルドルフは爽やかな笑顔を最後に見せてくれた。


「さあ、ボナール第二王女殿下。こちらにいらしてください。わたくしはこの国の宰相を努めております、ドニー・カッティーニと申します」

「ボナール王国第二王女、シャーロット・ボナールです」

 腰を折り、カーテシーをする。

「王がお会いになるとのことですので、謁見の間にどうぞ」


 ドニー様に先導され、お城の中を進んで行く。

 もちろん、ジュディも後からついてくる。

 かなり長い距離を歩いた後、扉の両脇に護衛が立って、厳重に守られている扉の前に着く。

「ここより先は、王女殿下だけで。侍女殿はお待ちください」

 カチャリと、扉が開けられる。


 しずしずと中に入り、赤いカーペットの上を歩いて行く。

 一段と高い王座の前まで来ると、カーテシーをする。

「ボナール第二王女シャーロットでございます」

 緊張しながら挨拶をすると、すぐに国王様よりお声がかかる。

「よい。楽にして顔を上げよ」

 許されて顔を上げると、穏やかな表情の国王様がいた。

 でも、あの王太子の父親にしては、若干、歳を取っているような気がする。

 ドニー様は美中年だが、国王様はおじいちゃんと言うほどではないが、おじいちゃんとおじさんの境界線に片足膝くらいまでは跨いでしまっているような、そんなお年だ。

 お顔は、若い頃は美青年だったろうなと思わせる作りで、ますますあの王太子の父親とは思えない。

 王太子から察するに、国王様はがっしりとしたお身体で、ガハハと笑う豪快系の人だと思い込んでいた。


「この度のこと、そなたには気の毒だと思っている。しかし、今回、わしは王太子のやることに、口出しをしないと決めておる。王太子の考えを信じているからのう。そろそろあやつも独り立ちをさせたい。そのための勉強はきちんとさせたつもりだ。もし、万が一、あやつが道を踏み外すようなことがあればわしが責任を取る。両国のことを考えて出した結論じゃ。そなたにも呑み込んでほしい」

 この国王様は、きちんと我が子のことを考えいらっしゃる方なのだろう。

 優しさや、親としての責任、また国を預かる者としての責任が国王様から感じられる。

「もったいないお言葉です。王太子様がお考えくださったことで、ボナールは大変助かりました。貧困に喘ぐはずだった国民を助けていただいたのです。私は王太子様に従います」


 国王様はにっこりと微笑まれた。

「あやつは、わしが歳を取ってからできた子でのう。もし、あれが生まれなければ、継承権はわしの弟に移るはずだった。わしは妃以外の妻は娶る気がなかったでのう。甘やかしもしたが、きちんと育てたつもりだ。その王太子が一生懸命世の中を良くしようとしている。わしはそれを見守りたいのだ」

「はい。私も、この先の未来が楽しみにございます」

「うむ。困ったことがあったら、なんでもあやつに伝えよ。解決させるくらいの度量は持っておろう。わしは、そなたも心健やかに過ごされることを望む」

「はい」


「ところで、お父上はどうなされておいでだ」


 私の本当の父上ではないけれど、一応答える。


「はい。元気にしております」

「戦争にはなってしまって、こんなことを言うのもなんだが、わしはそなたの父上を知っている。虹の王子と呼ばれ、みんなから好かれる良い王子であった」

「…虹の王子でございますか?」

「うむ。まだ幼い王子がその父君、そなたの祖父にあたるな。父君と我がランバラルドを訪問したことがある。溌剌とした賢い子じゃった。王子の訪問と共に我が国に虹がかかったのだ。偶然であろうが、それは神々しく見えた。青空と虹と他国の見目麗しい王子。王子が10歳にも満たない年頃であったが、あれが16.7の青年となってからの訪問であれば、令嬢がこぞって熱をあげたであろうな」

 10歳ならば、その王子は私の本当のお父様だ。

「まったく、あの王子が国王になり、戦争を起こすとは…。人の成長はわからん」

 残念そうに俯く国王様に、私は何も言えなかった。




 こうして、私の国王様との謁見は終わった。


 謁見室を出ると応接間に通され、そこで待つように言われてドニー様は部屋を出て行った。

 ジュディとは、ここで合流した。

 緊張をしていたせいで、ソファに腰掛けたとたん、ふぅと口からため息がこぼれる。

「姫様、ダメですよ。いくらランバラルドの人が誰もいないからってため息なんて出しちゃ」

 ジュディは侍女なので、一緒にソファには座らず、私の後ろに控えている。

 近くにいてくれるから、それも私が気を抜いた原因だ。

「だって、国王様にご挨拶したのよ。すごく緊張したわ。次は王太子様とご挨拶をして、私は何をしていったらいいのか、よくお話ししなくっちゃ」

 のどがすごく乾いていたので、出された紅茶に口をつける。

 やはり王宮。

 茶葉もいいものを使っているのだろう。とても美味しい。


 一息ついたところで、ドニー様が応接間に現れた。

「シャーロット様、お待たせしました」

 よくみると、ドニー様の後ろにもう一人いるようだ。

 ドニー様の背後から現れたのは、ボナール王国で王太子のお供として交渉にきていた人のようだった。

「シャーロット様、こちらは私の息子のフレッドです。先日お会いしていると思いますが、王太子殿下の側近候補として、勉強中でございます。何かあればお力になれると思いますので、いつでもお声掛けください」

 フレッド様は私に近付いて、跪いて手に触れる。

「シャーロット様、フレッドと申します。以後、お見知り置きを」

 そして軽く手の甲にキスを落とした。


「では、あとは若い者に任せてあります。わたしは仕事に戻ります。一応、この愚息に任せてありますが、何かあればわたしもいつでもお呼びください。」

「はい。ご親切に、ありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

 そして、フレッド様に向き直る。

「フレッド様、至らぬ点は多々あるかと思いますがご指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします」


 ドニー様は、私達が言葉を交わすのを見届けてから、部屋を出て行った。


「シャーロットちゃん、もう宰相はいなくなったからリラックスしていいよ」

 フレッド様は、ドニー様がいなくなったらご自分がリラックスされたようで、態度も口調も砕けたものになる。

「長旅で疲れたでしょう。いろいろな書類にサインをしてもらってからになるけど、すぐにシャーロットちゃんの住むところまで案内するね。ところで、ボナールで会った時とは少しイメージ変わったね。なんかすごく綺麗になった気がするね。あー、でも目が赤いし隈ができてる。昨日はよく眠れなかったのかな?部屋に着いたら一眠りするといいよ」

「いえ、あの、王太子殿下にご挨拶したいと思います。お会いすることはできないのでしょうか?」


 それまで、ずっと愛想のいい笑みを浮かべていたフレッド様の瞳が曇る。

「ごめんね、シャーロットちゃん。王太子とは会えないんだ。王太子は君と会う気はないって」


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