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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
15章 ボナールの王女

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きみは……

 ピリピリとした空気をまとい、フレッドが控え室を出て行った。


 オレは、ふーっと息を吐き、用意されていた水差しからグラスに水を入れて煽る。

「コンラッド、お前は会ったんだろ? 第二王女はどんな娘だ?」

「おいおい、王子。今それを聞くのかよ」

「いつ聞いてもやる事は変わらん。セリーヌ王女ばりの中身を隠し持っていたら、その牙を削ぐだけだ。どちらにせよ、側妃として公表してしまったら、その行動は制限させてもらう。今はどんな風に暮らしているんだ?噂も聞かないほど大人しくしているようだが」


 オレの言葉に、コンラッドとディリオンは顔を見合わせる。

「オレはまったく聞いてないな。ディリオン、お前は知ってるか?」

「オレも知らん。第二王女の世話は、フレッドとフレッドが用意した侍女に任せてある。静かにしているようだし、セリーヌ王女のような女ではないと思いたいが。セリーヌ王女のように、人を惑わす才能があるならわからんがな。何しろ、フレッドは女に甘い」


 コンラッドはソファに持たれて額に手をやる。

「フレッドはドニー宰相の息子だからな。ドニー宰相、いの一番にセリーヌ王女とダンスしてたぜ。まあ、オレたちが誰もセリーヌ王女に構わなかったからかもしれないが…」

「カエルだな。いくら他の国の王女たちと待遇が違っても、無視するべきなのだ。それをダンスを踊ってやるなどと。そもそも、招待したのもドニー宰相だ」


「まあまあ。そろそろ会場に戻った方がいいだろう。ところで、ディリオン、コンラッド、お前たちは婚約者探しは順調か?」

 オレがそう言うと、ディリオンとコンラッドが勢いよくオレを振り返った。

「ふざけるな、王子。貴様の後始末のせいでそれどころではない!」

「そうだぞ、ディリオンの言う通りだ。お前がセリーヌ王女をうまくかわせないから、心配でおちおちダンスもできん」

「はいはい。申し訳ありませんね。はあー。引き続き婚約者なしの4人組でいるわけだ」

「何を言っているのだ。貴様は妻を公表するのだろう。オレたちのように清廉潔白な紳士と同じつもりでいるな」

「どういう意味だよ」

「まあ、オレたちが婚約者を探すより、側妃持ちの王子が正妃を探す方が大変だろうがな」

「だよな……」


 ひとまず、オレたちは会場に戻ることにした。





 会場には戻ったが、令嬢を誘う気にもなれず、フレッドが第二王女を連れてくるのをぼんやりと待っていた。

 オレたち3人は会場の隅に固まって、ワイン片手に会場の様子を眺めている。

 セリーヌ王女はオレが戻ったのに気がついていない様子だ。


 さすがに噂の美姫だけあって、様々な男性から声を掛けられている。

 話術にも長けているのだろう。

 外国での夜会だというのに、気後れせずに対応していた。


 あまりにそちらを見過ぎたのか、セリーヌ王女がオレたちに気付き、こちらに向かって来る。

「マズい、またこっちに来るぞ」

 コンラッドがオレを見捨ててその場を去ろうとした時、会場の入り口がザワザワとし出した。


 なんだろうと、そちらに目を向けると、フレッドが1人のご令嬢をエスコートしているのが見えた。


 白金の光る髪をふんわりとカールし、両耳の上でダイヤの髪飾りをつけ、髪飾りと揃いの小ぶりなイヤリングをつけている。

 薄い黄色のオフショルダーのドレスを着ているが、虹色に輝くショールを掛けているため、胸周りを隠しており、品の良さを出していた。

 綺麗な鎖骨の上にはイエローダイヤのネックレス。

 ふっくらとした胸元からシュッと細くなるウエスト。

 遠目から見ても美しさがわかる令嬢に、まわりの男たちは胸を高鳴らせているだろう。


 だが、オレは違う意味で鼓動を速くしていた。


 訳もわからず、思考も追い付いていないが身体は彼女の元へと動く。


 人を掻き分け、近付くにつれて見えて来るその表情は、緊張のせいかぎこちない。

 白い肌に、くちびるにはピンクのルージュが塗られ、ツヤツヤと艶やかなのに、長い睫毛は不安そうに揺れていた。

 エスコートするフレッドに何か言われ、おそるおそる彼女が視線を上げると、いつものすみれ色の瞳がよく見えた。



「……ロッテ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 忘れんぼと銘打ってあって予測はできたけど王子は(現時点で)責任感や誠実さが感じられず好きになれない。国家間の人質だからこそ責任があると思うが署名までして完全に記憶にないとかひどすぎる、勝ち…
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