諸外国
忙しい日々を送っているうちに、刻々と夜会の日は近付いてくる。
他国の令嬢たちは、夜会当日の準備もたくさんあるので、数日前からランバラルドに滞在できるように計らっている。
パラパラと、他国から令嬢たちがランバラルド城に入場していく。
そうすると、オレの仕事は外交一色になる。
これで生涯の伴侶が見つかれば、婚姻の上、地ならしをして数年もしないうちに即位することになるだろう。
各国の令嬢はそれがわかっているからか、到着して城に慣れると、与えた部屋やガゼボ、温室の使用許可を取り、お茶会を開いてオレを招待する。
今日もオレとフレッドは、ガゼボでエルシアの第3王女とお茶を飲んでいる。
エルシアの王女ティアナ姫は、オレより3つ年下の15歳。
だが、さすがに王女としてきちんとした教育を受けてきたのだろう。
落ち着いていて、15歳とは思えない。
ロッテの方が年下と言っても納得ができるな……。
豊かな赤みがかったブロンドの髪を縦にロールさせて、マーメイドラインのドレスを身に纏っており、薄い腰が幼さを強調する。
テーブルには王女とオレとフレッドの3人が着いていた。
「とても素敵な庭園ですわね。ランバラルドは植物の研究にも力を入れていると聞きますわ。花は人の心を癒やすことができますし、穀物は国を豊かにいたします。さすがは大国ランバラルドですわ」
いや、うちは大国と言われるほどではないんだけど……。
中堅国より少し国土が広いだけだ。
オレがうまく返せないでいると、フレッドが助け舟を出してくれる。
「エルシアでは産業に力を入れていると聞きますよ。たくさんの技術者がいるとうかがっております。先日お贈りいただいた揺れが少ない馬車は、国王も素晴らしい技術だと驚いておられましたよ」
ティアナ姫は扇を口元にあて、ほんのり微笑む。
「あれは我が国でも最高の逸品ですわ。ですが、今はディデアの鉱山が封鎖されておりますでしょ? 鉄を輸入するのが難しくなっておりまして、早く開放していただけるのを心待ちにしておりますの」
なるほど……。
ボナールからディデアの鉱山をもらい受けた我が国と、手を組むとエルシアの産業が栄えると言うわけか。
エルシアには技術者は沢山いるが、多量の鉄を使うには、鉱山が必要だ。
ぼんやりと話に耳を傾けていると、ティアナ姫がオレに話を振る。
「わたくし、夜会当日の衣装を決めかねておりますの。ライリー王子は、どんなドレスがお好みですの?」
「えっ、あぁ、女性らしい可愛らしいドレスがいいですね」
「まあ……!」
ティアナ姫はあきれたような表情でオレを見た。
フレッドが慌ててフォローする。
「お、王子が言う女性らしいと言うのは、優しさを表すような、そんなドレスと言うことですよねっ! フリルがたくさん付くような、そんなドレスが王子はお好みです。ねっ、王子!」
よくわからないが、失言をしたらしい。
オレはフレッドに同意する。
「もちろんです。フリルのたくさん付いた、華やかなドレスがいいですね」
やっと、ティアナ姫の表情が和らぐ。
「そうでしたの。では、フリルとレースのたくさん付いたドレスを選びましょう」
その後は、庭園に咲く花の話をしたり、青空に白い屋根のガゼボは綺麗に映える等、他愛もないおしゃべりをして、お茶会はお開きになり、ティアナ姫を見送った。
ティアナ姫の姿が見えなくなると、フレッドがどっと疲れたように、テーブルに突っ伏した。
「王子~、ちゃんと諸外国のマナーの勉強した?」
オレは残った茶菓子のマドレーヌを口に入れながら返事をする。
「王太子教育でマナーは学んだぞ」
「じゃ、なんであんなこと言うの? 女性らしいドレスって言うのは、エルシアでは「性的な目で見ています」って事になるんだぞ」
「……は?」
「あそこは技術者に女性も多い。男性らしく、女性らしくと言う言葉はあんまり使っちゃいけないんだ。男女平等を謳う政党が出てきたくらいの新進国なんだから。可愛らしいって付け加えてくれてたからなんとかなったけど、オレが渡した重要項目だけでも目を通しておいてよね」
まったく、フレッド達には頭が上がらない……。




