幼なじみ
車に揺られて数分、もうそろそろ学校が見えてきた。
「そういえば久遠、いつになったら敬語と様付けとれるんだよ~」
そう、久遠に様付けと敬語は要らないと言ってから数年、一向にその気配がない。
「立場を考えてください。
あなたは主人、私は使用人です。」
「そうだけどさ…。俺ら同い年じゃん。」
「年が同じだからと立場が変わるわけではありません。」
「ぐぬぬ…。」
こいつ…本当に中学生か?
俺みたいに転生者じゃないのか?
…まあいいか。
そうこうしているうちに、学校に着いたようだ。
扉を開き車から降りる。
車で登校するのが珍しいのか、少し注目されるのが未だに慣れない。
みたところあまり遠くない様だし、歩きでもいいかもな。
…久遠の許可が降りれば。
玄関で靴を履き替え教室へ向かう。
「あっ、結翔だ!おはよー。」
聞き覚えのある声が聞こえる。
声の聞こえた方を向く。
するとそこには、俺の幼なじみの羽月理苑がいた。
理苑の父と俺の父の仲が良く、小さい頃良く遊んでいた。
勿論、小さい頃から一緒にいた久遠も一緒だ。
「ああ理苑か、おはよう。」
理苑の父は大病院の院長。
こいつも、俺と同じように裕福な家庭だ。
それ故に常識を知らないという時が多々あるが、人柄がよく、人にすかれるタイプだ。
教室へ入ると、もう1人見慣れた顔の奴がいる。
友人の鬼灯 郁斗だ。
郁斗は、小学校からのつきあいで、父親が政治家だ。
周りからの期待に押し潰され、少しひねくれたものの、信頼できるいい奴だ。
「おはよう、郁斗」
1人で席につき座っている郁斗に声をかけると、郁斗が振り向いた。
「結翔か、おはよう。いつも通り、久遠も一緒なんだネ」
「まあな」
「仲いいねー、その関係はいつまで続くんダカ」
因みに、久遠はというと、自分の席で着々と授業の準備をしている。
「さあな」
「ふーん。まあ、人と人とのつながりなんて脆いもんだヨ。その人の信用を失ったら、全部終わりだからネ」
「そうか?」
「そうだヨ、相手からしてみれば、自分はただの都合のいい駒かも知れないしネ」
そんなもんなのか…?
まあそれぞれ価値観は違うものだしな。
そんな事を考えながら席につき、授業の準備を終わらせると、教室に担任の工藤 優樹菜が入ってきた。