4。
(それにしても、あんな素人が作った感丸出しの花束で大丈夫かな)
少しだけ、不安が残っている。
(リボンだって……果物籠のだなんて、やっぱりやめた方が良かったかな)
その時は良いアイデアだと思ったが、冷静になってみると、そうでもないような気がしてくる。
物腰の柔らかい、男性だった。腕につけていた時計もとても高級そうなもので、多摩さんがハイスペックと評したのも分かる気がした。
顔立ちも整っていて、その態度に好感が持てたし、何より恋人に花束をあげるだなんて、なんて心の優しい人なのだろうと思った。
こんなにも優しい男性に愛されている女性は、一体どんな人なんだろう、と考える。
普段はあまり見ないテレビの中にいる、名前はわからないが綺麗な女優の顔が思い浮かんだ。頭の中で並ばせると、しっくりときて、ちょっと嬉しくなった。
(うわあ、ピッタリだあ。絵に描いたような恋人同士だな)
そう思うと、自分の身長が気になった。チビな私には遠い存在だ。
(それにしても、あの花束で、うまくいくといいな)
この人のために何とかしてあげたい、助けてあげたい、そう思って作った花束だったが、果たして自分が作った花束で大丈夫だろうか。
騒ぐ胸を落ち着けるように、私は胸に手を当てた。
少し落ち着くと、厨房で話している秋田さんと店長を見つけて挨拶し、モリタを出る。隣のメープルへと駆け込むと、真斗さんに遅いと言われて、頭を小突かれた。




