第10話「隷属させられているから逆らえないっ!」
「ボクはあなたをメチャクチャにしたい」
ようやく来た反抗期かー。
無理やり自由を奪われている危機に、ゾクゾクしたスリルを感じながら私は思う。
でも、
「メチャクチャにしたい、だなんて。そんなの、ウィルが言ってくれたらどんなことだって受け入れるのに」
「……姉さま?」
ウィルに支配を受けているけど、要は逆らわない範囲なら自由なのだ。
その辺、テイマーの力に対する理解には私の方に一日の長がある。
「本当におかしいわ。それくらいのことで私を無理やり支配しようとまでするんだから。そんなに私のこと、好きにしたかったの?」
かわいいんだからぁ。
「そうね、隷属の証に足でも舐めたらいいのかしら? 首輪を引かれて犬のように散歩、というのもありね」
ふふふっ。
「そんなところを誰かに見られたら、きっと「ウィルが私を下僕にしちゃった」って思われるわね」
ウィルの顔が引きつった。
「ああ、大丈夫。『呪われた血』のことを知っているのは私とウィル、そしてめったに帰ってこないお父様だけだもの。お母様は領地に引きこもって出てこないし」
私はウィルを心配させないように説明する。
「そういう趣味に耽溺する貴族の令息と令嬢、とでも受け取られるんじゃないかしら」
私、侍女たちに軽蔑されちゃうわね。
そう言って笑う。
あーおかしい。
「姉さまは、それでいいの?」
呆けたようにウィルは言う。
「いいんじゃないの?」
別にねぇ……
「かわいい弟のためなら、私の評判、品行方正で完璧な公爵令嬢の仮面なんて、それこそどうなっても構わないし」
当り前よね。
「姉さま……」
私は両手を広げて、ウィルに呼びかける。
「さぁ、なんでも言ってみて!」
お姉さんがぜんぶ受け止めてあげるから!
でも……
「正座」
はい?
「正座」
「はい……」
あああ、隷属させられているから逆らえないっ!
(ビクンビクン!)
アドルフィーネです。
悪役令嬢なのに正座させられて、弟から貴族の令嬢としてのたしなみと危機感の欠如について、こんこんと説教されました。
解せぬ……
本編の過去、主人公である悪役令嬢の義弟、年下子犬系公爵令息編はこれで完結です。
お読みいただき、ありがとうございました。




