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いじめっ子といじめられっ子の間に恋物語など生まれない  作者: 勇樹のぞみ
「逆転! 義弟に完全支配を受ける悪役令嬢」年下子犬系公爵令息編
10/15

第10話「隷属させられているから逆らえないっ!」

「ボクはあなたをメチャクチャにしたい」


 ようやく来た反抗期かー。

 無理やり自由を奪われている危機に、ゾクゾクしたスリルを感じながら私は思う。

 でも、


「メチャクチャにしたい、だなんて。そんなの、ウィルが言ってくれたらどんなことだって受け入れるのに」

「……姉さま?」


 ウィルに支配を受けているけど、要は逆らわない範囲なら自由なのだ。

 その辺、テイマーの力に対する理解には私の方に一日の長がある。


「本当におかしいわ。それくらいのことで私を無理やり支配しようとまでするんだから。そんなに私のこと、好きにしたかったの?」


 かわいいんだからぁ。


「そうね、隷属の証に足でも舐めたらいいのかしら? 首輪を引かれて犬のように散歩、というのもありね」


 ふふふっ。


「そんなところを誰かに見られたら、きっと「ウィルが私を下僕にしちゃった」って思われるわね」


 ウィルの顔が引きつった。


「ああ、大丈夫。『呪われた血』のことを知っているのは私とウィル、そしてめったに帰ってこないお父様だけだもの。お母様は領地に引きこもって出てこないし」


 私はウィルを心配させないように説明する。


「そういう趣味に耽溺する貴族の令息と令嬢、とでも受け取られるんじゃないかしら」


 私、侍女たちに軽蔑されちゃうわね。

 そう言って笑う。

 あーおかしい。


「姉さまは、それでいいの?」


 呆けたようにウィルは言う。


「いいんじゃないの?」


 別にねぇ……


「かわいい弟のためなら、私の評判、品行方正で完璧な公爵令嬢の仮面なんて、それこそどうなっても構わないし」


 当り前よね。


「姉さま……」


 私は両手を広げて、ウィルに呼びかける。


「さぁ、なんでも言ってみて!」


 お姉さんがぜんぶ受け止めてあげるから!


 でも……


「正座」


 はい?


「正座」

「はい……」


 あああ、隷属させられているから逆らえないっ!

(ビクンビクン!)




 アドルフィーネです。

 悪役令嬢なのに正座させられて、弟から貴族の令嬢としてのたしなみと危機感の欠如について、こんこんと説教されました。


 解せぬ……

 本編の過去、主人公である悪役令嬢の義弟、年下子犬系公爵令息編はこれで完結です。

 お読みいただき、ありがとうございました。

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