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覇王剣ドミナントソード  作者: ノブタカ
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第Ⅴ章 少女失踪


 翌日の未明。

 村の中央を東西に貫く目抜き通りの東端。


 ドミーナとアガシャの家の前を、村人たちが長い列を作り、ぞろぞろと通

り過ぎていく。

 中央広場に集まっていた村から脱出する人々の集団である。

 不承不承、故郷を捨てていかなければならないためか。

 みな俯きがちで、足取りは重そう。

 まるで葬列みたいだった。


 避難民のなかに孫娘の姿があるものと思っていたアガシャは、不自由な足

を押して家の外まで出て来ていた。

 でもドミーナはというと、広場を通り越し、主戦場となるであろう村外れ

の平原へと向って行ってしまった。

 当然、脱出者の列のなかにはドミーナの姿は見当たらない。


「アガシャさん」


 キョロキョロしているアガシャに誰かが声を掛けてきた。


 アガシャが声のほうを見ると、そこに立っていたのは、赤毛の少年を連れ

た温厚そうな小太りの中年女性。

 首には包みに入った大きな荷物を括り、太い首が絞まらないように、片手

で喉前の結び目を握っている。

 もう一方の手は、少年と手をつないでいた。


「エミル、ドミーナはどこ? 一緒じゃなかったの?」


 隣家に住むエミールと、そのひとり息子のアデルである。

「えっ? 私たちのところへは来なかったわよ。だから、まだ家にいるのか

と思って迎えに来たんだけど……」

「母さん、だから言ったじゃないか!」


 アデルは、母親の手を振り払って声高に言った。


「この子が、広場でドミーナちゃんの姿を見かけたって言うんですよ。だか

ら一応、最後に広場を出て来たんですけど、結局それらしい子は見当たらな

くて。じゃあ、やっぱりこの子が見たのは、ミーナちゃんだったのかしら?」

「まさか、あの子……」


 エミールの説明を聞いて、アガシャは思案顔になった。


「ありがとうエミル。ドミーナのことは、こっちで何とかするから、あなた

たちは先へ行って頂戴」

「えっ、ええ……」


 アガシャは、エミール親子に見送られながら、広場の方へと杖を突き突き

歩いて行った。


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