星華の凄さ
「あっ、ちょっと待ってくれ!」
フレデリカは部屋を出ようとする星華と彩姫を呼び止めた。
「ど、どうしたのフレデリカ」
「いや、寝る前に彩姫に身体検査を受けてほしくてな。」
彩姫は身体検査を受ける理由が分かっていなかったが隣にいる星華が分かっているので「私が連れていきます。」と無理矢理彩姫を医務室まで連れていった。
「頼んだぞー」
遠くから「はーい。」という声が聞こえ足音がどんどん遠ざかっていった。
「それでフレデリカ師匠、稽古してもらえますか?」
「あぁ私は構わないが・・・・・・流石に今日は休んだ方がいいんじゃないか?」
体の心配をしてくれているフレデリカの顔はいつもより不安そうだった。
「いえ、体の方は大丈夫です。それに僕はもっと強くならないと駄目なんです。今度こそ大切な人を守るために!」
フレデリカはこれ以上止めようとはせずため息をつくとすぐにやるぞと言わんばかりに外にでて行った。
「龍太はどうする?」
「いや、俺はいいや。今日はマナが使えない時のために別の方法で魔法が使えるか調べるから先に部屋に戻っているよ」
最後に頑張れよと僕を励まし、龍太は自分の部屋に帰っていった。
「フレデリカ師匠も待ってるし急いで僕も行かないと」
そして翔天はフレデリカ師匠の待つ外にいった。
「身体検査といったのにやることなんて細胞を採るだけだとは思わなかったよ」
医務室に入った瞬間いきなりメスで切られたときはどうなるかと思っていたが、星華が治癒術使えるおかげですぐ治すことができた。
「でもまさかメスを持ったまま歩きよって転んだなんてどんだけドジなのよ」
そう彩姫が医務室に入ったから切られたのではなく、転んだところに彩姫が入ってきたから切られたのだ。
「ごめんね。あの子よく何もないところで転けて周りの人にケガをさせるから」
かなり迷惑な人だな。
「でもよくあんなので医務室にいられるよね」
「いや、あの人の担当はみんなの健康管理とさっきの細胞検査だけだよ」
なんとなくだが彩姫は嫌な予感がして堪らなかった。
「じゃ、じゃあ誰が手当てしたりしてるの」
「手当てぐらいなら大抵の人ができるけど、かなりの大怪我の場合は私が手当てするの」
まぁ予想通りの答えだった。
しばらく歩いているとキーン・・・・・・キーンと、金属と金属が弾く音が聞こえてきた。
「ねぇ、この音ってなんなの?」
星華はこの音を全く気にしていないようで、もしかして自分しか聞こえていないのではと思ってしまい不気味な感覚が襲ってきた。
「ん? あぁこの音ね。この音はねフレデリカとショウが剣で戦っている音だよ」
ほんと星華はたまに話のテンポが合わなくなるな。
星華は何を考えているのか分からずこうやって話をしているときもぼんやりする時がある。
久々にみんなに会って随分変わったなと思っていたが変わっているのは見た目だけで中身は全然変わっていないのでそれがなんだか嬉しかった。
「もしかしてショウがフレデリカさんのことを師匠って呼んでるのって・・・・・・」
「そうだよ。ショウはフレデリカに拾われてからずっとこうして毎晩、剣の稽古をしてもらってるんだって」
自分の知らないところでフレデリカと一緒に頑張っているショウのことを想うとなんだか淋しい気持ちになった。
「龍太とホノちゃんもフレデリカさんに稽古とかしてもらうの?」
彩姫は三人がどれだけ強いのか分からないが周りの反応からしてかなりの実力者に違いないと睨んでいた。
「う~ん龍太はたまに稽古してもらっているみたいだけど基本的に我流だし、私は別に走っているだけで誰かに稽古なんてつけてもらってないしな~」
まさかの返答に彩姫が戸惑っている間に星華の部屋にたどり着いていた。
「ここが私の部屋だよ。ささっ遠慮せずに入って入って」
星華の部屋は意外とこざっぱりしていてベッドも二つあることから二人部屋なのが窺える。
「じゃあ今日はもう遅いからお風呂に入って寝よ」
その提案は素直に嬉しかった。
彩姫はここ最近野宿ばかりでお風呂なんて入っていない。
「でもホノちゃん、私服が今着ているのしかなくて・・・・・・」
いつのまにか星華の手には二人分の着替えとお風呂セット持っていた。
「ホ、ホノちゃんいつのまに準備していたの?」
「いやついさっきだよ」
いくらなんでも早すぎる。
予め人が来るから準備していたなら分かるけど星華にはそんな余裕があるはずがなかった。
「アヤちゃん、荷物がないから着替えがないと思ったから私の服を貸してあげるね」
「あ、ありがとう。でもさっき準備したといっても早すぎない?」
「エヘヘ、私こうみえてもスピードには自信があるんだ」
この時、彩姫は星華の力の片鱗を見た気がした。
「さあ! 時間も勿体ないから急いでお風呂場なにレッツゴー!!」
そう言って星華は彩姫の手をつかみお風呂場まで走った。