現実に戻って
こうして振り替えるとこの世界に来て楽しかったのは最初と最後だけだった。
自分の人生の一部を犠牲にした地獄の逃走生活はとても楽しかったものとは思えない。
「あ~あっ。こうなるならやっぱみんなに話せば良かった」
昔を思い出せば思い出すほど後悔の念が次々とあふれでてくる。
その時だった。部屋の扉がいきなり開き、誰かが私の側まで近寄ってきた。
「イヒヒッヒッヒ~。どうやらお目覚めのようですね~」
予想はしていたが来たのはアストロギアだった。この登場の仕方が昔と同じだったため最悪の現実の目覚めだ。
「一体何のようなの?」
「おやおや貴女は自分の立場が分かっていないようですね~」
自分の立場ぐらい充分分かっているが、こいつと話すだけでイライラするからあまり話したくないのだ。
「で、何なの? 用がないならどっかにいってほしいんだけど」
鋭い視線で睨むもアストロギアは特に気にすること無く話を進めていく。
「貴女を鍵として利用した後どうするか少し考えたんですが~」
この発言からして私が鍵として扉を開けたとしても、命を失うといったことは無さそうだ。
「私の優秀な手駒である二人がいないいま、私には使える手駒が誰一人いません~」
「だから何なの?」
アストロギアは勿体振るようにニタ~ッと笑うと自分の顔を私の目の前まで近づけてきた。
「ですから今から貴女を洗脳して私の手駒になってもらおうと思いましてね~」
「ふざけないで! 私が洗脳にかかるわけ無いでしょ!」
「そうやって強がれるのも今のうちですよ~」
ガシッと私の頭を掴みボソボソと何かを唱え出すと私の頭の中にアストロギアの思念が入り込んでくる。
「キャアァァアアッ!!」
「いい声ですね~」
必死にわずかな理性を保とうと頑張るが、それをさせないようにと、どんどん思念が流れ込んでくる。
「くっ! 私は私は・・・・・・」
「中々粘りますね~。ですがそれも時間の問題ですがね~」
ここで挫けるわけにはいかない。ここでアストロギアの洗脳を受け入れてしまえば確実にショウ達と戦うことになってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。だから・・・・・・。
「私は負けないッ!」
「そうですか~。ならどこまで続くか試してあげましょうか~!」
どのような手を使っても私を洗脳したいアストロギアは、更に威力を上げてくる。
絶対に耐えてやる。耐えて耐えて耐えまくって必ずショウ達と再会するんだ。
ーー絶対に・・・・・・耐え・・・・・・てや・・・・・・る
だが私の意識は遠退いていき何時しか辺りは真っ暗になってきた。