星華の過去~一人になっても~
「いきなり俺を呼び戻してどうしたんですかアストロギア様」
今しがた俺は封印の扉を探しに出ていたのだが急にアストロギアからすぐに戻るよう言われ俺は嫌々でアストロギアの居るモニターだらけの部屋まで戻ってきていた。
「思わぬ事態になりましてねぇ~」
椅子に座り、珍しく頭を抱え困りはたて顔をしていた。
「思わぬ事態とは一体・・・・・・」
「先程、鍵が逃げ出しましてねぇ~」
「逃げた・・・・・・それは本当ですか!?」
にわかに信じがたい話だ。まさか心の壊れたあの状態でここから逃げ出すなんて一体どこにそんな力が有ったのか。
「私が嘘を言うと思いますか~」
「い、いえ。ただあまりにも信じがたい事だだたので・・・・・・」
「別に鍵が一人で逃げ出したわけではありませんよ~。どうやら何者かが手引きしたらしたらしいのですよ~」
そう言いながらアストロギアは左端のモニターを操作しだした。
そこに映るのは鍵を捕らえてる部屋の前だった。しばらく見ていると一人の鎌を持った女性が現れ、部屋の扉を破壊して鍵を連れ去っていた。
「この女性が鍵を?」
「見れば分かるだろぉ~? この無能がッ!」
人が歯向かってこないからといって調子に乗りやがって。だがここで怒りのままに攻撃したところでヤられるのは目に見えているためここはじっと耐えるしかない。
「そ、それで鍵を連れ去った女性はどこに?」
「つい先程、我が同胞の自爆に巻き込まれましたよぉ~」
ここに戻る途中で見た謎の大きなクレーターはその爆発で出来たものなのだろうか?
「つまり死んだということですか?」
「いいや~。連れ去った女性の方は体の半分ほど失っている状態で見つけたのですが・・・・・・息が有ったので今治療中ですよ~」
ということは治した後、そいつを洗脳して自分の手駒にするってことか。相変わらず嫌な奴だぜ。
「では鍵の方は?」
「鍵の方はあの爆発から逃れていたらしく未だ行方が掴めてないですねぇ~」
「何故分かるのですか?」
アストロギアは自分の手元に置いてあった赤いペンダントを掴み俺に投げつける。
「これは?」
「それは鍵が生きてるか分かるアイテムですよ~。色が赤ければ生きている。青ければ死んでいるという仕組みになっているぅ~」
薄々嫌な予感がしてきた。こんなものワザワザ渡すことなく説明すればいいのに渡して来たということは・・・・・・。
「アストロギア様。私を呼び戻したのは訳は・・・・・・」
「そう。逃走中の鍵を見つけ連れ戻してくることだぁ~」
やっぱりか。逆にそれ以外の理由で呼び戻される理由がないからな。
「分かりました。早急に鍵を見つけてきます」
「あまり期待していないのでゆっくりでも構いませんよぉ~。封印の扉の捜索はあの女にやってもらうつもりですからねぇ~」
中央のモニターに映る何かの数値を見ながら言うアストロギアに殺意が湧いてしょうがない。だがいまここでこいつに操られて自由な体を奪われるのだけは嫌だから俺はグッと堪え部屋を出て鍵の捜索に赴いた。
その時の俺は鍵なんてすぐに見つかるものだと思っていたが、中々見つからず七十年の年月が経つとは思っていなかった。
「何これ? どうなっているのよ私の左目は!?」
爆風に吹き飛ばされ、湖に落ちた私は慌てて出ると爆発が有った場所を確認した。そこはスプーンでくり貫かれたようにポッカリと穴が空いていた。こんな惨状ではリアお姉ちゃんが生きているとはとても思えず私は落胆していた。
でも私はリアお姉ちゃんが命懸けで助けてくれたんだからここで下を向いたらダメたと自分に叱咤くし、心を落ち着かせるために水を飲もうとしたとき、水面に映る自分の目に驚いてしまった。
自分の両目は赤色だったのに水面に映る自分の左目は赤から金色になっていた。
「もしかしてあの手術の時に私の目を・・・・・・」
手術の時に目を弄られた記憶はあるが、実際何されたのか確認することが出来なかったから無視していたのだが自分の目の色が変わるタイミングなんてあの時しか思い付かない。
「じゃあ、あいつらの言っていた鍵って・・・・・・」
だが私はそこで考えるのを止めた。これ以上考えてしまうと折角助けてもらったこの命を今にも投げ出しそうで怖かったからだ。
「今は逃げないと。今ならかなり遠くまで逃げれるはず。後はどうにかしてこの目を隠す方法を見つけないと」
そう今は逃げるしかないのだ。きっとこの世界は私の居た世界と同じくらい広いはず。ならこの目を治す方法だって何処かにあるはずだ。
だから私は逃げ続ける。最悪、自分の命が尽きようとしてもだ。
私はそう決意するとリアお姉ちゃんの家に戻りバッグに食糧を詰めるとそのまま家を出て森の外を目指した。