星華の過去~脱出~
「おいどこに行ったぁ!」
「あっちに行ったんじゃねぇーのかッ!」
警報が鳴り響いてから数分であちこちに異形の姿をした亜人達辺りをウロウロ徘徊していた。
目的は恐らく私の奪還とリアお姉ちゃんの排除なんだろう。
私達は物陰などに身を隠しながらバレないようにゆっくりと進んでいた。だがあの亜人達の嗅覚に近い何かのせいですぐに見つかってしまいまともに動くことが出来なかった。
「まさかこんなに見張りがいたなんて・・・・・・私が来たときはもっと少なかったじゃん」
この状況にイライラしているのかリアお姉ちゃんが珍しく悪態をついていた。
「リアお姉ちゃん・・・・・・」
「星華・・・・・・」
少しでもリアお姉ちゃんを落ち着かせればと思い、私はリアお姉ちゃんの腕をギュッと握る。
「大丈夫だよ星華。私がちゃんと連れ出してあげるから」
今度は私を落ち着かせるかのようにリアお姉ちゃんは私の頭を撫でる。
「星華。状況が状況だし、もう強引に抜けるしか方法がないんだけど・・・・・・着いてこれる?」
なるほど。リアお姉ちゃんがこうやってこそこそしながら移動していたのは私を気遣ってのことだったのか。
「もちろん当たり前だよ」
十年近く身動きを封じられていたとはいえあのいかにものろまそうな見た目の亜人達を撒くぐらいなら走れるはずだ。
「よしッ。じゃあ私が隙を突いてあいつらの何人かを動けなくするから星華はそのまま着いてきて頂戴」
「分かった」
リアお姉ちゃんは鎌を片手から両手に持ち直し、何時でも攻撃できる体勢に入る。
亜人達の動きをよく見、全員が背後を見せたときリアお姉ちゃんは飛び出しそのまま目にも留まらぬ速さで六人ぐらいいた亜人達の首を切り落とす。
「追っ手が来る前にとっとと出るよ」
「う、うん」
リアお姉ちゃんが走りその後を続くのだが、まさか動けなくするの意味が一時的なものではなく永遠に動けなくするという意味だったことに若干の恐怖を感じた。
そこからのリアお姉ちゃんは頑張りは凄かった。次から次に現れてくる亜人達の首を切り落としながら着実に出口へと向かっていた。実際後ろから何人かは来ていたが私達の足の方が速かったため気にすることはなかった。
そしてリアお姉ちゃんが閉じられた扉を叩き壊すと外は見慣れた懐かしき場所・・・・・・私が育った森であった。
とりあえずざっと辺りを見渡し自分がどこにいるのか把握すると、ここはエルフの集落が近くにある場所だった。つまり私が捕らえられた建物の場所はエルフの集落の近くにひっそりと建っていたのだ。
「おい外に出たぞ! 追えー!」
「星華とにかく逃げるわよ」
「分かってるよ」
まだまだ追っ手が来る中、私達は逃げ続けた。森の中なら絶対に逃げきれる自信が有ったからだ。
だけど私達は逃げきることが出来なかった。何故なら亜人達が放った炎のせいで森全体が火の海と化し逃げ場を失ったから。