星華の過去~実験~
あれからどれだけの月日が、年月が過ぎたのかは分からず囚われてからの人生は苦痛や悲痛の連続だった。外を見ることが出来ないからどれだけの時間が経っているのかも分からないし、今が朝なのか昼なのか夜なのかも分からない。
だけど唯一時間が分かるのは毎日一回、恐らく同じ時間に白衣を着た男性達が私を連れて別の部屋に連れていくのだ。
最初は外れた瞬間に逃走してやろうと考えていたが鎖を外す前に何かの薬を射たれ、力が入らず抵抗することが出来なくなった。
連れていかれるのは真っ白い部屋で周りにはよく分からない機械がたくさん置いてあり、中央には人一人が横になれるぐらいの台が設置してある所だ。
そこに連れられ台の上で横になると台から枷が現れ手と足を拘束するからそこでも逃げることが出来なかった。
行われるのはいつも頭に電極を付けられ脳波の確認をされたり、妙な薬の連続投与、そして私の体を鍵にするための手術だ。
どれもこれも私を苦しめるのには充分でいつしか私の心と体は疲弊していた。
今となっては抵抗する気力もなく毎日毎日、白衣の男性を待つことが日課になっていた。
そして今日もまた扉の開く音と一緒に白衣の男性が入ってくる。
ーーあぁ私はいつまでこんな生活を送るんだろう
白衣の男性は私の考える力までも奪うかのように薬を射ち、私をあの部屋に連れていく。
ーーもう誰も助けなくて良いから私を殺して・・・・・・死なせて
「これはいつまで続くんですかアストロギア樣」
俺、アルナールは実験の続く部屋の外で眺めていた。あの部屋は外からでも見れるように一部の壁がガラス張りになっている。
「そんなの決まってるでしょ~。鍵が出来上がるまでですよ」
隣でそう答えるのは俺の自由を奪うにっくきアストロギア。
今は洗脳されていないが一つでもあいつの癪に障ることを言えば即座に殴られるだろう。
「いいんですか。あんなことを続けていれば鍵が完成するよりも先に器の方が壊れますよ」
「イヒヒ、心配無用です~。別に死なないよう気を付ければ体や心が壊れようが関係ありませんからね~」
「そうですか」
目の前で続くイカれた実験。きっと美しかったであろう銀色の長い髪は汚れボサボサになっており、目も生気の宿った目とはとても言いがたい。これは既に心が壊れているということなのだろうか。それならばもう治ることは出来ないだろう。
「それではもうそろそろしたら貴方には封印の扉を探しにいってもらいますからね~」
イラつく顔で俺の顔を覗き込んでくる。あの顔面に一発殴ってやりたがったがそんなことすれば俺がどうなるか分かったもんじゃない。
「分かりました。直ぐに準備をしますので」
「よろしい~。では私は戻るのでしっかりとやるのですよ~」
そう言うと軽快な足取りでアストロギアは姿を消した。
俺はアストロギアが居なくなったのを確認するともう一度、部屋を見る。
実験はいよいよ鍵の移植手術という最終段階に入ろうとしていた。
「悪く思うなよ。これがお前の運命だったんだ」
俺はそう呟くと封印の扉を探すためにこのイカれた場を去った。