星華の過去~囚われて~
「んっ・・・・・・んん・・・・・・」
ゆっくりと目を開けると私は森の中ではなく、床も壁も鉄でできた部屋にいた。
「ここは・・・・・・」
手を使って立ち上がろうとしたとき私は膝立ちの状態で両手首が壁から伸びる鎖に繋がれていた。
「な、何これ!」
ガンゴンと無理に引きちぎろうとするがもちろんびくともしない。
「こうなれば」
足で鎖を壊すために足だけで立ち上がろうとしたとき足首には大きな鉄球のついた足枷が付けられており動かすことも出来なかった。
「嘘、何でこんなのまで」
何故だかは知らないがレガースは付けられていたが足の自由が利かなければ何の意味もない。
「このッ! このッ! このぉッ!」
足も使えず手も使えない状況で私は必死に鎖を壊そうと足掻き続けた。けど鎖が壊れるよりも先に自分の腕が壊れそうでこれ以上続けることが出来なかった。
「うう、痛い痛いよ。助けてリアお姉ちゃん・・・・・・」
諦めかけ下を向く私の目元にはポツポツと涙が零れ続けた。そのとき、バンッとこの部屋の扉の開く音がした。
「ッ! もしかしてリアお姉ちゃん! 助けに来てくれたの!」
「イヒャヒャヒャヒャ。残念でした~正解は私でした~」
部屋中に響くその声はリアお姉ちゃんの澄みきった綺麗な声ではなくその反対の濁ったようなおぞましい声だった。
暗くて声の本人は見えないがカァン、カァンとこちらに近づいてくる足音だけが聞こえてくる。
「やっとお目覚めになってくれましたね~。気分はどうですか~」
私の前に現れたのは灰色のローブを纏う中年っぽい感じの男性で、ボサボサの短い青い髪に額には赤い小さな丸石が埋まっている。さらには見開きった目に両手の甲から生える角。声だけでも気持ち悪かったのに見た目も気持ち悪いとは全く救い用のない人だ。
「貴方は誰よ! 私をこんなところに捕まえたのは貴方なの!」
必死に叫ぶ私だがまるで私の言葉を聞いていないようだ。だがこんなとこにいて私を助けてくれない時点でこいつが私を捕らえたのは間違いないはずだ。
「イヒヒ、だいぶ良い感じですね~。長寿のエルフでさらに魔族と同じマナの気配がする~」
私の言葉を無視して喋るが、私はあいつが何を言っているのか全く分からなかった。いや正確に言えば『魔族と同じマナ』だけが分からなかった。
「これなら充分、封印の扉を開ける鍵の器に成れますね~」
今度は封印の扉と鍵。話の内容を聞く限り恐らくだが私を捕らえた理由はその扉を開ける鍵にするというだけだ。だが一体どうやって私を鍵にするつもりなのか検討もつかない。
「これで器は手に入れた後は“あれ”を完成させるだけですね~」
「あれ、って何! ねぇ何で私が鍵なのよ!」
だが答えてくれるはずもなく男性はニヤッとふてぶてしく笑うとそのまま部屋を出ていってしまった。
「ねぇ待ってよ。ちゃんと話してよ! ねぇ!」
だが既に男性は部屋を出た後なのでこの言葉を聞くものは私以外、誰もいない。
「私はどうなっちゃうのよ」
もしかしたら自分は得たいの知れない何かに改造されてしまうんじゃないかという恐怖心が襲ってくる。
「怖いよ・・・・・・助けてよリアお姉ちゃん・・・・・・」
決して届くことのない言葉だと分かっているが言わないと自分の心が持たない気がして私はずっとリアお姉ちゃんに助けを求め続けた。