星華の過去~出逢い~
自分の姿に驚いた私はその場から動けなくなってしまった。
今まではみんなに会いたいただそれだけのために頑張って森を抜けようとしたのにもうみんなに会っても気づいてもらえないそう思うと体のいうことがきかなくなる。
「私はなんでこんな姿になってるの」
だがそう言った所で答えてくれる人はいない。そう自分の周りには誰一人いないそのせいか更なる孤独感を味わってしまう。
「私は・・・・・・私はこのあとどうすればいいのよ」
自分がどうすればいいのか分からなくなってしまい、半ば自暴自棄になりいっそのこと湖に身を投げて死んでしまった方が楽になれる気がした。
ゆっくりと立ち上がり湖に体を投げ出そうとしたとき急に背後の茂みからカサカサと草木の擦れる音がした。
「な、何!?」
振り返ると遠くの方で草木がカサカサと擦れながらこちらに近づいてくるのが見えた。
「だ、誰かこっちに来ているの」
明らかに風で擦れている訳ではないため何者かがこちらに近づいているのが分かったがそれが人かどうかは分からない。
もしかしたらこの森に住んでる可愛い小動物かもしれないし人を襲うような獰猛な獣の可能性だってある。
そうこう考えていたらついに目の前の茂みが揺れ、バサッと何が飛び出してきた。
「キャッ!」
ビックリして尻餅をついてしまったこれで襲われてしまっては逃げることなど出来ない。
怖くて前が見えないままガクガク震えていたが一向に襲われる気配がしない。
「あ、あれ? なんでこんな所にエルフの少女が居るの?」
聞こえたのは動物の声でなく人の澄みきった綺麗な声がした。
恐る恐る顔を上げると茂みの側で、独特な模様の赤いシャツと柄のないシンプルな赤いスカートを着ている私より少し背が高く茶髪のロングヘアーの女性が心配そうな顔でこちらを見ている。
「あっ、ごめんね驚かせちゃって。私はこの辺りで人の声が聞こえたから心配してここに来ただけなの」
私の恐怖心を少しでも和らげようと両手に何も持ってないよとアピールしている。
「うっ、うぅ」
「ごめん泣かないで私は別に貴女をどうこうしようと思ってここに来たわけでは・・・・・・」
気づけば私は知らないお姉さんに抱きついて涙を流していた。それをお姉さんは拒絶することなく私の頭をそっと撫でてくれた。
「怖かったんだね。もう大丈夫たからね」
そう言ってくれたお姉さんの顔はとても優しい表情をしていたのだろう。それに甘えた私は五、六分くらいずっと泣いていた。
ひとしきりに泣き終わった私はお姉さんから離れた。一時の感情とはいえ知らないお姉さんに抱きついて泣いてしまったと思うと恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になってしまう。
「えーと・・・・・・ねぇまず貴女の名前を教えてくれないかな?」
少し背を落としお姉さんは目線を私に合わせてくる。
あんなことをしてしまった以上、名前を言わないわけにはいかない。
「星華・・・・・・山城星華・・・・・・」
「山城星華? エルフにしちゃあ珍しい名前ね」
珍しいって日本ではわりとある名前な気もするが・・・・・・この人は外国人なのだろうか。
それにしてもさっきから私のことをエルフエルフって何を思ってそんなこと言っているんだろう。
「・・・・・あの」
「ん? あぁ私の名前がまだだったね。私の名前はリアンユよ、よろしくね星華」
「リア・・・・・・リア・・・・・・ンユ」
中々に言いづらい名前になんて発音していいか分からない。この人にはここが何処か聞かないといけないのにどうすればいいんだろう。
「あ、あれ? もしかして私の名前、言いづらい?」
「リア・・・・・・リア・・・・・・リアお姉ちゃん・・・・・・」
「えっ!?」
「言いにくいからリアお姉ちゃんって呼んでいい?」
自分の中ではこれ以上ないぐらいの素晴らしい呼び方だと思うのだがさすがに失礼だろうか。
「いいよ、その呼び方で。なんなら本物お姉ちゃんだと思って接していいから」
どうやらオーケーのようでリアお姉ちゃんは嬉しそうに私の頭を撫でる。
本当はこういう子供扱いされるやり方は嫌いなのだが何故かリアお姉ちゃんにならやられても嫌ではなかった。
「それで何で星華はここにいるの? ここは星華みたいなエルフの子供が来るとこじゃないんだけど・・・・・・」
この時の私はここは日本の・・・・・・故郷の何処かの森だと思っていたのだが、リアお姉ちゃんと話しているうちにここは日本いや地球ではないどこか別の星にいることを知り、何かしらの理由で死んでを私はここに長い時を生きるエルフに転生したことを知った。
「じゃあ私はもうみんなに会えないの・・・・・・」
もう二度とみんなに会えない、それどころか私の帰る場所もなくなった今私はどうすればいいのだろう。
「星華・・・・・・貴女がよければの話なんだけど私の家で暮らす?」
「えっ・・・・・・」
「帰る場所がないんでしょ。私はこの近くに一人で住んでいるから貴女一人増えても大丈夫なのだけど・・・・・・」
確かに自分の帰る場所がない今このままこの場所にいたらいずれ死ぬのは誰だって分かることだ。それでも私はそうまでして生きたいとは思っていなかった。
「私は・・・・・・その・・・・・・」
断って森の中に逃げようとしたときグゥ~と気の抜けた音が私のお腹から聞こえてきた。
「あっ・・・・・・」
急いでお腹を押さえるも既に手遅れでリアお姉ちゃんはクスクスと笑っている。
「うぅ~」
「ごめんね笑ってそうだよねここに来て何も食べてないんだからお腹空いたよね。とりあえず家に来てもうすぐお昼にしようと思っていたから丁度良かったわ」
私の手を掴もうと手を伸ばすリアお姉ちゃんを弾き無理にでも森の中に逃げようとしたが、いかんせん空腹には勝てず私は素直に手を掴まれリアお姉ちゃんと一緒に森の中に入っていく。