星華の過去~始まり~
目を覚ました私が最初に見た光景は風でなびく茂みの隙間から見える青い空だ。
「ここは・・・・・・」
上半身を起こし周りを見渡すがどこもかしこも木、木、木、木、木ばかり。つまり私が居るのは何処か分からない森の中らしい。
「私なんでこんな所にいるんだろ」
ここにいる経緯を辿るため必死に自分の記憶を探るがここにいる経緯が全く思い出せない。
そもそも最後の記憶が街の入口でショウとアヤちゃんと別れた後だから余計自分がここいるのが分からなかった。
何故か着ている服が白い布で出来たワンピースになっていたが特に気にすることはなかった。
「ここにいても仕方ないし・・・・・・とりあえず森を抜ければ誰か人は居るはずだよね」
立ち上がろうと地面に手をかけたとき柔らかい土の感触ではなく、硬く金属みたいな感触がした。
「ひゃ!」
驚いて手を離し、自分の触れていた地面を見てみるとサッカーとかで使うレガースが落ちていた。
「な、何でこんなとこに落ちてるの?」
あまりにも不自然に置いていたから怖くてそのままここに置いていこうと思っていたが自然の中にこんなのを置いていくのもどうかと思いとりあえず持てるかどうか試してみることにした。
「よいしょっと・・・・・・ってあれ? 思っていたよりも軽い」
金属で出来ていたからてっきり重たいものだと思っていたが紙切れみたいに軽かった。
「こんなにあっさり持ててしまったら持っていかないとダメじゃん」
持てなかったらここに置いていける理由が出来ると思っていたため仕方なくレガースを持って森の中を歩き出す。
「もぅ、空はあんなに綺麗なのに何でこの森はこんなに鬱蒼としてるのよ」
今まで一人になることがほとんどなかったためこの状況はかなり辛い。外がまだ明るいから今はそんなに怖くはないが夜になって辺りが真っ暗になってしまえば恐怖で動けなくなるかもしれない。
「うぅ、早くこの森を抜けたいよ。みんなどこに居るの? 会いたいよ」
少しでも恐怖を紛らわそうとみんなのことを思い浮かべるがそれが逆効果になってしまい哀しくなってしまう。
「まだ抜けないの?」
一体どれほどの距離を歩き時間が経ったのだろう。歩いても歩いても見えるのはまだ木、木、木、木、木ばかりで外が見えない。
まだ空は明るいが何時までも明るいとは限らないから早く森を抜け出したかった。
「疲れた~。喉も乾いてきたしもう私ダメかも」
絶望的な状況に足取りが重くなるなか歩き続けると目の前の木々がどんどん少なくなってきた。
「もしかして出口かな」
もうすぐ出口かもと思うとさっきまで重かった足取りも軽くなる。
「光が見える! やったやっとこの森から出られる」
歩く度に目の前が広がっていくことに喜びを覚え歩くスピードも速くなる。
ーー出られる早くみんなに会いたい!
みんなの顔が脳裏をよぎり目元に涙を浮かべ私はついに森を抜けた。
「・・・・・・っ!」
森を抜けるといや正確には森を抜けたわけではない。何故なら目の前にある湖を囲むように森が鬱蒼としている。
「そんな・・・・・・やっと森を抜けたと思ったのに」
ショックで肩を落とすが休憩できる所に出れただけでも良かったものだ。
「・・・・・・綺麗な湖。これなら飲んでも大丈夫かな」
湖に近づき手に持っているレガースを足下に置き、手で水を掬おうと湖に顔を覗かすと水面に短い銀髪の赤い目をした美しい女性が映っていた。
「ひゃっ! だ、誰!」
慌てて後ろを向くが誰も立っていなかった。
何かの見間違いかと思いもう一度覗くと水面には先程の女性が写っている。後ろを見てもやはり誰もいない。
もしかしてと思い、湖を覗き自分の手を顔に触れさせると水面に映る女性も同じように顔を触っていた。
「嘘っ! もしかして・・・・・・」
あちこち自分の顔を触りまくるが水面に映る女性も同じ動きをしている。試しに髪の毛を一本千切り見てみるとそれは本来の黒い髪ではなく水面の女性と同じ銀色の髪だった。
「やっぱり・・・・・・じゃあこれに映っているのって・・・・・・」
ここまでくると信じるしかない。この水面に映る女性こそが私なのだと。
「イヤ・・・・・・イヤ・・・・・・」
こんな姿・・・・・・自分の面影が全くないこの姿じゃあみんなに会っても私だと気づいてもらえない。
もうみんなと一緒に遊ぶことが出来ない。そんなの・・・・・・そんなの・・・・・・。
「イヤァァアアアーーー!!」