みんなに会いたいよ
「んっ・・・・・・ここは?」
太ももにひんやりとした感触がし目を覚ますと私は床も壁も鉄で出来た部屋の中でポツンと座っていた。
立ち上がろうとしたが手も足も拘束されまともに動くことが出来ない。
「またこの場所に来るなんて・・・・・・」
正直この場所にだけは居たくなかった。
アストロギアがただの嫌がらせでここに捕らえているのか、それともただ何も考えずにここに捕らえているのかは分からない。
「やっぱりアヤちゃんに見られたよね」
今までぼやけて見えていた左目が今ははっきりと見えている。
「あの時アヤちゃんはどう思ったんだろうな~」
目を閉じると畏怖の目でこちらを見るアヤちゃんの姿が鮮明に思い出せる。
「たぶん今頃アルナールが私の過去をみんなに話してるんだろな~」
アルナールには黙っているように言っていたのだがこうなってしまってはもうアルナールも黙ってはいないだろう。もしかしたら逆にショウ達が無理に聞き出そうとしているに違いない。
「フフッ」
アルナールに詰め寄るみんなのことを想像すると笑いが込み上げてしまう。
「あ~あ、もう少しだけみんなと一緒に居たかったな~」
七十年間ずっと逃げ続けてついに見つけた私の居場所。だけどもう戻ることの出来ない居場所。
「みんな私の過去を知ったら・・・・・・いやそれよりも私がエルフって知った時点で」
今私が唯一恐れているのはアストロギアに利用され封印の扉の鍵になることではなくみんなに嫌われてしまうことだ。
「あの時私はどうすればよかったのかな」
逃げているときに自分が自殺でもしていればこんなことにはならなかったはずだ。でも私は死にたくなかった。どこか別の場所にいるはずのみんなに会いたいという我儘のせいで。
「私は一体どうすれば・・・・・・」
七十年前この施設から私を助けてくれたリアお姉ちゃんはもういない。今の私に出来ることはぼっーと扉を見つめることだけ。
「またみんなに会いたいよ」
気づけば右目からは涙が流れていたが左目から涙が流れることはなかった。
「やっぱり左目はもうダメか」
こんな私をみんなが受け入れてくれるのだろうか。また七十年前みたいに周りから畏怖の目で見られるのは嫌だ。
「嫌だよそんなの嫌だよ。会いたいよみんなに。笑いあいたいよまたみんなと一緒に」
こんなこと言っても誰も聞いてくれない。だってこの部屋には私しか居ないから。
「私は、私は・・・・・・」
この部屋に居すぎたせいなのだろうか私はこの世界に来たときのことを思い出していた。