星華の秘密2
「百年以上ってどう言うことだよ」
龍太が混乱するのも無理のない話だ。普通に考えてそんな話を信じろというほうが無理だ。
「一旦落ち着け。あいつが長寿なのもちゃんとした理由があるんだよ」
逆にちゃんとした理由がないほうが困る。
「お前らは今まであいつの見た目に何も疑問を抱かなかったのか?」
「いや特には・・・・・・」
アルナールに言われやっと気づいた。星華だけが昔の面影が全く無かったことに。
「そうよショウや龍太には確かに昔と容姿は全然変わっていなかったけどホノちゃんだけは別の姿になってたわ」
「やっと違和感に気づいたか。あいつの見た目が違うのは単純にお前らと種族が違うんだよ」
「種族? それって私達と同じ人のようで人ではない存在ってこと」
ミエの他種族の認識が妙に引っ掛かる所があるが今はそれが理由で話を遮る必要がない。
「まぁそんな感じだ」
「じゃあ星華の種族は一体何なんだよ」
「あいつの種族は・・・・・・エルフだ」
「エル・・・・・・フ・・・・・・」
昔フレデリカ師匠に貸してもらった本にエルフについて書かれているものがあった。
たしか内容は『とても美しく若々しい外見を持ち、森なのどで暮らし自然を守る役割をしている。エルフは長寿で長い者で千年は超える。身体能力は高く、魔法の扱いにも長けており全てにおいて我々人類とは比べ物にならないほどの高位の種族だ。』これ以上の続きは覚えてないが今思い出した内容だけでもほとんどが星華に当てはまるしあいつが無駄にこの世界の地理に詳しかったのもこれで説明がつく。
「なるほど、どうりで星華から美味しそうな魔力の臭いがしたわけね」
そういえば初めてウンディーネがみんなの前に現れたとき彩姫の近くではなく星華の近くに現れていたな。
「星華がエルフなのはわかったのですけど何で星華はショウ達に黙っていたのですか」
確かに別に僕らは星華がエルフだって知っても態度を変えるつもりなどないしそれは星華だって分かっているはずだ。
「それって属性解放術とアストロギアが関係してるのかしら」
「属性解放術ってどういうことだよ」
「彼女がどうやってリアンユに勝てたと思う」
そうだ。リアンユは属性解放術を使うのに対してどうやって星華が勝てたのかは疑問に思わなかった。
「星華も属性解放術が使えたのよ。しかも纏いの力までね」
「纏いの力って?」
「何言ってんだよお前や龍太が魔女と戦ったときにやったあれだよ」
僕と龍太は顔を見合わせる。二人で合体技を放ったときに武器が変わったのを覚えているが纏いの力なのか。
「そう纏いの力は自分の属性を武器に宿すことだ」
「なら彩姫のあれも纏い力なのか」
彩姫が最初に見せ拳に光を集束するあれも纏いの力の一つなのだろうか。
「あれは単に武器にではなく拳に集束しているだけだ。あれなら帝都バーネリアで戦った俺と翔天がやっている」
「そう・・・・・・なんだ」
「ちなみにアストロギアの使ったあの触手はあいつのローブの中に入っている無数の鞭を纏いの力で操っているんだよ」
ということはあの触手の見た目からしてアストロギアの属性は闇ということだ。
「纏いの力がどんなのかは分かった。次はアストロギアが星華を拐った理由を教えてくれ」
「もちろんそのつもりだが・・・・・・この話はかなり長くなるはずだ」
「それってつまり・・・・・・」
「そうだあいつの過去を知るということだ」
僕らは今まであいつの過去を知ろうとしなかった。それはあいつが嫌がっていたから無理に知ろうとしなかったがもしかしたら僕らがあいつの過去を知る勇気がなかっただけなのかもしれない。
でも今は違う星華を助けるためにも・・・・・・これからもあいつと一緒に居るためには僕らは知らなければならない。星華の過去を。
「私はこれからもホノちゃんと一緒に居たいし謝らないといけないこともあるの。だから私はホノちゃんの過去を知らないといけないの」
「俺もあいつと幼馴染な以上知らないといけないはずだ」
既に知る決意をした龍太に先程まで俯いていた彩姫も何か覚悟を決めた表情をしている。
「わ、私もこれからも星華と仲良くしたいから」
「私もミカと同じだよ。知る覚悟はとっくに出来てるわ」
全員の顔を見渡したアルナールはフッと微かに笑う。
「よしお前らの覚悟は分かった。だがこれだけは覚えておけよあいつの過去はお前らが思っている何倍も辛い出来事だということを」
「あぁ大丈夫だ話してくれ」
そしてアルナールは自分の知っている範囲で語り出す。昔の星華について。