助け出す
「下等な人間ごときが~!」
障壁を簡単に壊されてアストロギアはかなり頭にきているようだ。
「こうなればより強力な障壁を創るまでです」
「そうはさせない」
アストロギアが障壁を創るよりも速く星華の蹴りが横腹にはいる。
「グヘェ!」
吹き飛ぶアストロギアに更なる追撃を与えるべく星華は後を追う。
「アストロギアは私達に任せてショウと龍太は早く魔女を」
「ああ分かってる」
「ありがとな星華」
後方でアストロギアが地面に落ちる音が聞こえ、そこにアルナールと彩姫も向かう。
「よし行くぞショウ!」
「ああ」
時間があまりない以上長期戦に持ち込むのは賢い判断ではない。なら戦いかたは一つ速攻による短期決戦。
「フッ、何か策があると思えば。その程度で私に勝てるとでも」
魔女は左手をつき出すとまた無数の氷の弾丸を打ち出してくる。
「へっその言葉そっくり返してやるよ」
僕の前に出た龍太は正面に雷の壁を作り氷の弾丸を防ぐ。
「だがこれでお前ら私に近づくことはできない」
「本当にそうかな?」
「何?」
龍太のお陰で魔女の背後に回ることが出来たがギリギリの所で気づかれ右手から放たれた炎の塊が襲ってくる。
「その程度!」
風で火力を弱め軽く叩き落とす。
「おい隙だらけだぜ」
魔女の攻撃が止まった瞬間を見逃さず横一線に薙ぎ払うが脇腹を掠めるだけでだった。
「ちっ、あと少しだったのに」
「馬鹿な私がこの程度の奴等に傷をおうだと」
魔女はショックで体をワナワナ震わせている。
「許さん。お前ら楽に死ねると思うなよ」
怒りで暴走する魔女はバッと両手を水平に広げると自身の周りに数十個近くの炎と氷の塊を展開させた。
「ここにいる奴等全て消し炭にしてやる!」
「おいおいさすがにあれは簡単には叩き落とせないぞ」
「でもあれを処理できたら必ず魔女に隙が出来るはずだ」
確実に全てを斬る。それが可能なのはもうこの技しかない。
「三日月流抜刀術かなら俺は」
僕が抜刀術の構えにはいるのを見た龍太は槍を垂直に構える。
「そういえばその槍は自身の魔力を吸収して力に変えるんだったな」
「まっそういうことだ。あいつが発動したと同時にやるぞ」
「分かってる」
隣でどんどん自分の魔力を槍に注ぐ龍太は既に体力の限界を越えているはずだ。ならチャンスは一度きりだ。
「何をしても無駄だ!」
両手を前に突き出すと同時に炎と氷の塊がこちらに迫ってくる。
「三日月流抜刀術・・・・・・真空一閃!」
鞘にしまった剣を横一線に抜き放ち再び剣を鞘にしまうと炎と氷の塊の一部が切れ爆発しそれに巻き込まれるように他の炎と氷の塊が空中で爆発する。
「そんなまさか一太刀で全て消されるなんて・・・・・・」
この技は限界まで力を溜めることで一撃の威力を上げるのだが隙が大きすぎるため中々使うことができない。
「はあぁぁぁあ!」
龍太の魔力を吸収した槍は見たことがないほど光輝いている。
「これでどうだ!」
「ギャァァァ!」
肩から腰にかけて斬りつけられた魔女は悲鳴と共に大量の血が溢れた。
「やった!」
「ああ手応えありだ」
後ろによろめきながら大量の血を噴き出す魔女だが倒れることはなかった。
「まだ・・・・・・まだ倒れるわけには」
「ちっしぶとい奴だ。あれを喰らってまだ生きてるなんてよ」
ホントにその通りだ普通なら即死レベルの傷だ。もう一撃与えようとしたとき魔女の腹部に黒い渦が見えた。
「あの渦は・・・・・・龍太!」
「ああ分かってる助けるなら今だ!」
僕らは同時に走り出すと魔女の腹部にある黒い渦に手を突っ込む。
「や、止めろ」
手を突っ込む僕らに魔術で攻撃しようとしたが傷が深すぎたのか魔術が発動しない。
しばらく黒い渦の中を模索していたら何かがこちらの手を掴む感触がした。
「龍太!」
「ショウ!」
お互い顔を見合わせるとせーのっと同時に黒い渦から何かを引っ張り出す。
「ミカ!」
「ショウ」
「ミエ!」
「龍太」
翔天はミカを龍太はミエを引っ張りだした。
「ショウっ!」
余程怖かったのだろう急に抱きついてきたミカの頭をそっと撫でる。
「怖い思いをさせてごめんな。でももう大丈夫だから」
まだ微かに肩を震わせていたがだいぶ落ち着いたようだ。
「助けてくれてありがと龍太」
ミエはミカと違いいたって平気そうな感じだ。
「みんなで脱出するって約束したんだお前だけいないのはおかしいだろ」
「フフ、素直に私の事が心配して助けに来たって言えばいいのに」
「うるせー」
そう言って龍太はミエの額をつつく。
これで無事にミカとミエを助け出すことができたんだ。
そして僕らは短い再会の挨拶をかわした。