再会
目を覚ますと僕は体が縛られており身動きできない状態だった。
「やっと目を覚ましたか」
隣には同じように縛られている龍太と星華がいた。手元に神器はなくどこにあるか龍太に聞いたところ僕と龍太の神器は僕らが倒れた場所にあるらしく星華の神器は星華が装備したままのようだ。
あいつらがなんで神器を回収しなかったのか分からなかったがすぐに神器は選ばれた者しか持つことができないことをおもいだした。
「どれくらい時間が経ったか分かるか」
とりあえず自分が気を失って何時間たったか聞いてみた。
「多分・・・三十分しか経ってないと思うよ」
星華がそう答え、あまり長い間気を失っていたわけじゃないんだなと思い、次に今自分たちの措かれている状況を確認した。
「なぁこの縄を魔法でどうにかできないか」
龍太にわずかな希望を抱き聞いてみたが、どうやら自分たちの周りに魔術でできた障壁があり、それのせいで魔力の源であるマナを使えず、魔法を使うことができないらしい。
周りの警備が薄いうちにどうにか脱出したいがこれといっていい案が思いつかなかった。
どうにかして縄が切れないかいろいろやってみたけが全然ダメだった。
「ごめんね。私が捕まったせいで二人にもこんな目に遭わせて」
「いや、星華は悪くないよ。それどころか星華が居なくなったことに気づかなかった僕らが謝るべきだし」
いつも明るい星華が、この状況が自分の責任だと思っているようで、かなり落ち込んでいるようだった。
「どうやら三人共目が覚めたようだなぁ。革命軍の切り札である神器使いがこんなにも簡単に捕まるなんて笑える話だぜ」
その声を聞いた瞬間、なぜか体の震えが止まらなかった。
「どうしたのショウ、大丈夫?」
「おい、しっかりしろショウ!」
二人が心配して、声をかけてくれていたが、今の僕にはそんな声すらも聞こえないほどの恐怖が襲ってきた。
「久しぶりだな。まさかこんなところで出会うとはな」
二度と出会うことはないと思っていた。出会いたくなかった。こんな男の顔を見たくはなかった。忘れたかった。
「ちっ、つまんねーな。俺が求めているのはそんな顔じゃねーんだよ、見せてくれよあの時の怒った顔をよ!!」
声がでない。七年前は、みんなを殺したこいつが憎くて復讐したいと思っていたのにいざこうして目の当たりにすると復讐心よりも恐怖心の方が上回ってしまう。
「おい、ショウお前はこいつと知り合いなのか」
「なるほどお前ら二人は記憶がないのか」
男の言葉に二人はかなり動揺していた。またりまえだ龍太と星華、いや多分僕以外の地球人全員は、なんで死んだか理由が分からないはずだ。最初は龍太と星華に話すべきか迷ったが忘れてるなら忘れたままの方がいいと思い僕も知らないふりをしていた。
「おい、ショウ知っているなら話してくれ・・・・・・なぁ聞いているのか!!」
「ダメだよ龍太、ショウだって何がなんだか分からないんだから!!」
喋らなきゃいけないそうは思っても声がでなかった。
「ほんとつまんねぇーな三人共そんな顔しやがってそんな顔するぐらいなら転生なんてせずに素直に死んでればいいのによ」
それを聞いて龍太だけでなく星華までもが焦り出した。
イライラしてきた男は急に何かをしようとしたとき部下であろう人がこっちに近づいてきた。
「アルナール大佐、本部から通達です」
アルナールという名前の男は僕たちから視線を外し、部下の方に歩いていった。
「ショウいい加減にしろ!! 知っているのか知らないのかぐらいは答えろよ!!」
男が離れ少し恐怖心が薄れやっと声がでるようになった。
「二人共ごめん。でも今は話すことはできないからここを脱出してから話すからそれでいいか」
龍太と星華は少し不満そうだったがなんとか納得してくれたようだ。
どうやってここから脱出するか考えようとしたとき、あの男アルナールが戻ってきた。
「おいお前ら俺は今から帝都に戻る。こいつらは後から護送用の馬車が来るからそれまでこいつらを逃がすなよ」
アルナールは部下達にそう伝えると僕らの方を見て「次に会うときはいい表情してくれよ。」そう言うとアルナールは馬に乗って帝都に行った。
「チャンスだ! あいつが居ないなら脱出する方法がある」
龍太のまさかの発言に僕も星華も唖然としていた。
「えっ、ここから脱出する方法があるの?」
星華も信じられないようで少し慌てていた。
「あぁ。アルナールという奴がペチャクチャ喋っている間に思いついたんだ」
さすがたとしか言いようがなかった。
「で、どうやって脱出するんだ」
龍太がこらから脱出作戦の説明をしようとしたとき急に外から爆発音と叫び声が聞こえてきた。
「全部隊戦闘準備しろ!! 例の神器使いが攻撃してきたぞ!!」
先程アルナールと話していた人物がそう指示すると狼狽えていた者達も武器を構え走って行った。
「ねぇ、あの様子だと私達が探している神器使いの子がこの拠点を攻めにきたみたいだね」
星華が冷静に分析しているなか、龍太は自分の縄をほどき僕たちの縄をほどいていた。
「って、えーーー!! なんで縄がほどけてるのお前!」
龍太の縄がほどけてるのに今更ながらに気づき、そんな僕に対し龍太は深くため息をついた。
どうやら星華は最初から気づいていたらしく、今気づいたのみたいな顔をされた。
「えっ、でもさどうやって縄をほどいたんだよ。魔術障壁のせいで魔法は使えないんだろ」
「お前さー周りをみてみろよ」
周りを見るとあったはずの魔術障壁がなくなっていた。
龍太が言うにはさっきの衝撃で魔術障壁が壊れたらしくその瞬間、魔法で縄を焼き切ったらしい。
縄をほどいた僕らは、急いで外に出たがそこはすでに戦闘の終わった後だった。
「嘘・・・・・・もしかしてこれ全部一人でやったの?」
「今回敵は三百人近くいたはずだなのにこんな短時間で倒すなんて」
たしかに五十人近くいた敵を一人で倒したのも信じられなかったのに、それをはるかに上回る数を倒したあとの光景を僕らは、ただぼーっと見ることしか出来なかった。
「貴方達で最後みたいだね」
遠い所から声が聞こえ、僕らはその方を見るとゆっくり僕らの方に向かってくる人がいた。どうやらあれが話で聞いていた神器使いのようで両手にナックルの武器を装備していた。顔は夕日の逆光のせいで見えなかったがスタイルからして女性であるのはわかった。
「素直に降参するなら見逃してあげるけどどうする?」
どうやら彼女は僕らのことを敵の仲間だと勘違いしているようだった。
「待って、僕らはこいつらの味方じゃない。僕らは革命軍に所属しているもので君と争うつもりもない」
口頭でそれだけ言ったけど信じてもらえるかは不安だったがどうやら敵意がないのだけは分かってもらえたようだった。
「じゃあなんで革命軍の貴方達が敵の拠点から出てきたの。」
「そ、それは僕らがへまして敵に捕まってしまったからで・・・・・・えっ!」
やっと彼女の顔を見たとき言葉がでなかった。
龍太と星華も驚きのあまり口を開けていた。
「ねぇ急に黙ってどうしたのやっぱり貴方達は敵だっ・・・・・・た・・・・・・の、」
彼女も僕達の顔を見て驚いていた。
「嘘・・・・・・もしかしてショウに龍太にホノちゃん?」
僕らの名前を言ったことで僕らは確信した。
彼女が僕らの大切なもう一人の友達だということを。
背が延びスタイルも良くその金髪ショートヘアな髪型で顔の横に長く垂れている触覚ヘアーの先はだけが黒色だったがあの誰にでも手を差し伸べる優しい顔だけは変わっていなかった。
「久しぶり彩姫」
そして僕らは、七年ぶりに一ノ宮彩姫と再会した。