最悪のパターン
「起きて、ねぇ起きてよショウ」
真っ暗な世界で彩姫の呼ぶ声が聞こえる。
「うっ、ここは・・・・・・」
「よかった目が覚めたのね」
目を開けると今にも泣き出しそうな彩姫の姿があった。
「そうか僕らは爆発に巻き込まれて・・・・・・」
上半身を起こし周りを見ると天井が崩れ辺りは瓦礫で埋もれ出口も塞がれていた。
「み、みんなは」
「何人かが瓦礫に埋もれていて今助け出しているの」
「そうか・・・・・・彩姫も無事でよかった」
自分の体はあちこち傷だらけでたぶん瓦礫に埋もれていた僕を彩姫が助けてくれたのだろう。
「そういえば龍太とアルナールは?」
「俺らはここにいるぞ」
彩姫の後ろから龍太の声が聞こえそちらを見るとミカとミエを抱き抱える龍太とアルナールの姿があった。
「ミカ!」
「安心しろ気絶しているだけで命に別状はない」
「そうかそれはよかった」
無事ミカとミエを救出できホッと一息をつく。
「アストロギアは」
あいつが爆発源の近くいたとはいえそう簡単にくたばるやつとは思えない。
「分からないこうも暗くちゃあ探すに探しきれないからな」
確かに魔術で生み出した手のひらサイズの炎だけでは探すのは難しいだろう。
「取り合えず今はここを脱出する方法を探すぞ立てるか」
「あ、あぁ何とかな」
少しふらついたが問題なく立ち上がる。
「あまり無茶しないでよあの術のせいでまだ本調子じゃないんだから」
「それは彩姫もだろ」
兵士達が必死に仲間を助けているなか僕らは何処か出口になりそうな場所がないか探そうとしたが彩姫がある一点を凝視していた。
「どうしたの彩姫?」
「ねぇあのモヤモヤは何だと思う」
「えっモヤモヤ?」
彩姫の指す方を見ると空中に黒いモヤモヤしたものが浮いていた。
「ホントだ。あれは何だ?」
「わからない」
「あぁ俺もだ」
黒いモヤはまるで生きているように鼓動している。
「何だか分からないけどあれをあのままにしてはいけないそれだけは分かる」
「私もそう思う」
僕と彩姫は同時に黒いモヤ攻撃を仕掛けたが見えない壁に阻まれる。
「なっ!」
「何なのこれ!」
彩姫が全力右ストレートを叩き込むがびくともしなかった。
「か、硬い」
次に属性解放術を使ってみたがそれでも壊すことができなかった。
「彩姫の力でも壊せないとは」
「ホントに人間とは不粋な種族ですね~」
「その声はアストロギア! やはり生きていやがったか」
黒いモヤの近くに現れたアストロギアは爆発の影響もなく無傷だった。
「あの爆発は想定外でしたが無事に魔女の復活は成功したようですね~」
「復活だと!? まさかその黒いモヤが」
「その通り~。さぁ見るがいい魔女の復活を~!!」
黒いモヤに振り替えり両手を広げると黒いモヤはドクン、ドクンと鼓動の音が強くなり何か別の形に変わろうとしている。
「くそっさせるか!」
「あっおい!」
ミカをポイっと龍太に渡し背中の剣を抜き放ち見えない壁に叩きつけるが彩姫同様びくともしなかった。
「ムダですよ~。この壁はそう簡単には壊せませんからね~」
「くそっ! ホント腹立つ障壁だぜ」
ここまで来て僕らは魔女の復活をただ見ることしかできなかった。ミカもミエも助けることが出来たのにこんな結末になろうとは誰も思わなかった。
黒いモヤはどんどん人の形に成っていく。
「さぁ今こそ蘇るのです人類を裏切し魔女よ!」
黒いモヤが完全に人の形を成したとき辺りが急に明るくなった。
「さぁ見るのです魔女の姿を!」
アストロギアの隣に立つのは妖艶な姿をしており唇の色と同じ長い紫色の髪は毒々しい。全身を黒と紫のスレンダードレスを纏いそれと同じ色をした先の尖った帽子を目深に被っているため目を見ることは出来ない。
「あれが・・・・・・魔女?」