形勢逆転のチャンス?
魔方陣のせいで力が奪われていくなか魔族アストロギアの不気味な笑い声だけが部屋中に響き渡る。
「よくも私を裏切ってくれましたね~アルナール」
「うるせー! 俺は元々お前の言う通りに動くのが大嫌いだったんだよ」
「そうだろうね~だがそのおかげでこうして計画に必要な餌を連れてきてくれたんですからね~」
「餌?」
この魔方陣がただの罠ではなく何か別の用途のため使用されていると気づき周囲を見ると真ん中の大きなガラスケースが淡く光っている。
「まさか俺達の力をあそこに集めているのか」
龍太も気づいたらしく魔法で破壊しようとしたが掌に出した火の玉がすぐに消えてしまう。
「イヒャヒャヒャヒャ無駄な足掻きですよ~。この魔方陣は貴方達の体内にあるマナを吸収しているんですよ~」
「クソッだから魔法が使えないのか」
この状況だと属性解放術も使えず僕らはなすすべもない。
「さすがは英雄の力を継ぐ者だ~。もうこんなにもマナエネルギーが貯まっている~」
真ん中のガラスケースは先程まで淡く光っていたのにどんどん強く光り出す。
「さあいよいよ復活の時だ~」
「復活! まさかここに封印の扉が!?」
「少し違いますね~。私が復活させるのは魔族に寝返った魔女ですよ」
やっと分かった。こいつが何のためにミカとミエだけを必要としたのか。
「この二人のDNAを合わせると不思議なことに魔女と同じDNAになるんですよ~。こんな偶然滅多にない」
やはりそういう理由だったか。
「そして魔女が復活すれば空間を操る魔法で封印の扉を探さなくともマーラ様を目覚めさせることができる~。ああーなんて素晴らしいことなんでしょう」
まるで自分の勝ちが既に決まったみたいにペラペラ喋り出すアストロギアにイライラが止まらない。
「後一分程で魔女を復活させるだけのマナエネルギーが溜まる。お前らはそこで指をくわえて見てるがいい~」
「悪い俺のせいだ。俺があいつの計画を知っていれば・・・・・・」
悔やむアルナールの顔は本当に申し訳なさそうだった。
「アルナールが謝る必要はないよ。アルナールがいたからここまでこれたんだから」
「だがそれが原因で魔女を復活させるエネルギーを・・・・・・」
「それは遅かれ早かれとられていたと思う。今は後悔するよりも今何ができるかが重要だろ」
龍太の言う通りだ。この状況を打開する方法が必ずある。
「そろそろですね~。ではこれから魔女の復活を始める」
機械が本格的に作動し始め、ミカとミエが入っているガラスケースも光り出す。
「ダメでしたか」
セバスや他の兵士が諦めかける中僕らは何か方法がないのかを考える。
「ねぇ多分だけどミカ達が入っているガラスケース上についているケーブルを切れば何とかなるんじゃないの?」
「ケーブル?」
ガラスケースの上には確かにケーブルがありそれは真ん中のガラスケースまで延びていた。
「確かに彩姫の言う通りかもしれないがこの距離で一体あれをどう切るんだよ」
「そ、それは・・・・・・」
「あのケーブルを切るだけなら方法はある」
三人の視線が向くなか僕は懐から一つの武器を取り出す。
「それって・・・・・・」
「ああチャクラムだよ」
「お前なんでそんなのを持ってんだよ。それに使えるのか?」
このチャクラムは簡単に持ち運べていざというときに使えるかもしれないと思いこの国で買ったものなのだ。
「大丈夫だよ練習はしっかりしてる。動く人に当てるのは無理だけど動かない物なら!」
持てる力を振り絞り投げたチャクラムは綺麗な弧を描き二本のケーブルを切断する。
「やった!」
「な、なんですと~!」
初めてと狼狽える姿を見せるアストロギアはおぞましい顔でこちらに振り替える。
「下等な人間風情がよくもやってくれましたね」
「はっ、ざまー見ろってもんだよ」
「こうなれば今この瞬間貴様らを消し炭にしてやりますよ」
アストロギアの両手から巨大な火の玉が出現した。
「機械を止めたのはいいけどこれはどうするんだショウ」
「さぁ? なるようになれだろこんなのは」
星華がいれば神器の力であの火の玉を跳ね返せるのにと思うが無いものをねだってもしょうがない。
「こうなれば一か八かであれを叩き斬るしかねーだろ」
「そうだねアルナールの言う通りだな」
力が入らない今、僕らはギリギリまで力を溜める。
「まーだ悪あがきをするつもりですかぁ~! いいでしょうなら全力で貴方達を葬りさるまでです!」
巨大な火の玉をアストロギアが放とうとしたとき機械から妙な音がしだした。
「ん? なんですかこの音は・・・・・・」
アストロギアが振り返ったとき機械はこの部屋の人達を巻き込む形で大爆発を起こした。