魔族との対面
研究所の中は外で見た通りあまり大きくはなかったが地下に続く階段がありそこを降りている。
いくつもの階には所々に凶暴化した獣が配置されておりそれを兵士達が倒しといる間にどんどん下に降りていく。
「後どれくらい降りればいいんだ」
「たぶんもうすぐのはずだ」
気づけば兵士の数も減り十人近くしかいない。
「見てください翔天、あそこに開けた場所がある」
セバスの言う通り前方に広い部屋がある。
「たぶんあの部屋だ。あそこにアストロギアの野郎がいるはずだ」
入るとそこは思っていたよりもかなり広く百人ぐらい入ってもまだまだ余裕そうな感じだ。
「アストロギアはいないみたいね」
「・・・・・・あっショウあれを見ろ!」
何かを見つけたらしい龍太の指す方を見ると左右に緑色の液体の入った大きな円筒のガラスケースが一つずつあり中央にはその二つよりも大きな円筒のガラスケースがあった。
「何なんだあれは?」
「それよりも左右のガラスケースをよーく見ろ」
そう言われ左右のガラスケースをじっと見ていたら中に人が入っていた。
「あ、あれは」
見間違えるはずがない。右側のガラスケースにはミカが入っている。そして左側に入っているのがミカの姉ミエなのだろう。
「アルナール。アストロギアの気配はするか」
「・・・・・・全くあいつの気配を感じねぇ」
「ならこの部屋にはいないってこと?」
「分からねぇ。もしかしたら気配を消している可能性がある。お前ら周囲の警戒を怠るなよ!」
周囲を警戒しつつミカの元に近づくために一歩踏み出したら突如足元が光だした。
「わぁ!」
「おいショウ。お前何をした!」
「いや僕は別に何も・・・・・・」
光は足元から床全体に広がっていく。
「何なのこの光は」
「これはただの光じゃない。魔方陣だ!」
光の正体を気づいたときにはもう手遅れだった。発動した魔方陣はまるで僕らから何かを吸収するように力を奪っていく。
「嘘!? なにこれ力が全然入らないんだけど」
「きっとこの魔方陣のせいだ。アルナールこの魔方陣について何か知らないのか」
「俺は魔法に関しては何の知識もないが一つだけ言えるのはこれはアストロギアが仕掛けた罠・・・・・・つまり俺達が来るのは想定内だったってことだ」
目の前にミカがいるのに力が入らない。どうにかしてこの魔方陣を止められないか試してみたが止まる気配がない。
「イーヒッヒッヒッ。こうも都合よく掛かってくれるとはね~」
何処からともなく気味の悪い声が聞こえてくる。
「この声は・・・・・・」
声のする方向、ミカとミエのいるガラスケースの真ん中の大きなガラスケースから灰色のローブを纏う中年の男性が出てきた。
「まさかこんなにも簡単に私の作戦通りに動いてくれるとは~」
うっすら見える肌の色はローブと同じ灰色の肌をしておりボサボサの短い青い髪、額には赤い小さな丸石が埋まっている。見開きった目は完全にイカれており、両手の甲から角が生えている。
「アルナール、もしかしてあいつが」
「あぁあいつが幹部魔族の生き残りのアストロギアだ!」
アストロギアの姿は完全にこの世のものとは思えないほどのおぞましい姿だ。そう僕らは初めて魔族と対面した。