不意打ち
「たぶんこの場所にアストロギア達がいるはずだ」
「ここにミカが・・・・・・」
茂みから顔を覗かし研究所の様子を見る。
「見張りは誰もいないようだな」
「なら攻めるなら今ってことだね」
見張りをつけていないのが罠という可能性があるため迂闊に攻められない。
「それでどうするの? このままこうしてじっとしているのも時間の無駄だよ」
彩姫の言う通りだがどうも嫌な予感がして攻めきれない。
「なら私達が先攻するのであなた達はその後をついてきてください」
「だがそれは危険すぎる」
「私含めここに来ている兵士達は危険を覚悟で来ています」
下手すればそれは自らを犠牲にした特攻にしかならなくなる。
「いいですか翔天さん。何かを得るには何かを犠牲にしなければいけないときもあります」
「でも僕はこの戦いで誰も死なせたくないんだ」
「甘いですね。ですがあなたが何と言おうと私達は行きます遅れないで下さい」
「ま、まて!」
セバスは茂みから飛び出し兵士達に突撃の命令をだした。待ってましたと言わんばかりに茂みから次々と兵士が出てき研究所に向かっていく。
「おい俺たちも行くぞ」
「う、うん」
兵士の後に続くよう茂みから飛び出し研究所に向かうがその途中で妙な風が吹いた。
「な、なんだ」
つい足を止めてしまいそれを心配しみんなが足を止める。
「どうしたんだよショウ」
「さっき吹いた風に違和感を抱いて・・・・・・」
「風だと」
アルナールが空を見上げるとまた妙な風が吹く。
「この風はまさか!? 全員今すぐ伏せろじゃないと殺されるぞ!」
アルナールは近くにいた星華と彩姫を無理矢理しゃがませ僕と龍太もすぐにしゃがんだ。
兵士達もアルナールの言葉で咄嗟にしゃがんだが何人かの兵士が反応できなかった。
状況が理解できず狼狽える兵士達を嘲笑うようにまた妙な風が吹く。その風は次第に強くなり立っていた兵士達が空を浮く。
「うわぁーーー」
「い、一体何なんだ」
空に浮くあわてふためく兵士達はいきなり体が真っ二つになり大量の血を撒き散らしそのままグシャと地面に落ちた。
「一体何が起こったんだ」
今何が起こったのかがすぐには理解できなかった。アルナール以外は。
「あれは風の刃だ。あいつが最も得意とする技だ」
「あいつって・・・・・・」
誰がやったのか聞こうとしたとき研究所近くの茂みから大鎌を持った女性、リアンユが出てきた。前とは違い顔につけていた仮面は外している。
「さすがね今の不意打ちを避けるなんて」
「まさかお前が見張りをしていたとはな」
睨み合う二人だったがいきなり星華がリアンユに向かって強烈な右蹴りをいれる。
「星華!」
「みんなは先に行って。リアンユは私が止めるから」
「でも一人では無理よ」
彩姫も一緒に戦おうとしたがアルナールがそれを止める。
「ここは星華に任すぞ」
「何言ってるのよいくらなんでも一人じゃ無理でしょ!」
「落ち着け。リアンユの足の速さに付いていけるのは星華だけだ。下手に加わるとあいつの足を引っ張るだけだ」
僕もアルナールの意見に賛成だった。リアンユの攻撃は二回くらったことがあるがどれも速く僕らでは到底追い付けない。
「彩姫、ここで足止めをされたらアストロギアの計画を止められなく可能性がある。だからここは星華に任せよう」
「龍太の言う通りだ。それに僕らが速く作戦を成功させれば助けに行くことができる」
彩姫は諦めきれない顔をしていたがふぅーと息を吐く。
「分かったここはホノちゃんに任せる。でもやっぱり一人にはできないだから・・・・・・きてウンディーネ」
彩姫の頭上に水のか溜まりが現れそれが弾けると同時にウンディーネが出てきた。
「ウンディーネ、ホノちゃんのサポートをしてあげて。そして絶対死なせないで」
「分かりました。彩姫も無理しないでね」
「後、星華が無茶しないよう見ていてくれ」
「はい。任せてください」
そう言うとウンディーネは星華の所まで移動する。
「よし今のうちに行くぞ」
研究所に向かおうとする僕らを止めるようにリアンユが風の力で妨害しようとするが星華とウンディーネがそれをさせない。
「絶対にみんなの邪魔はさせないんだから」
きっと星華は辛い想いをしているだろう。自分の大切な人と命を懸けた戦いをするのだから。
「星華・・・・・・頑張れよ」
届いたかどうかは分からない。だがここで立ち止まる訳には行かないので僕らは研究所の中に入りその後ろをセバス達が続く。
「さっ、誰もいなくなったねここから全力で行くよリアお姉ちゃん」
「何を言っているか分からないがとっととお前を殺してあいつらの後を追う。属性解放・風神!」
嵐のような風を纏い突っ込んでくるリアンユだが星華は落ち着いている。
「ごめんねフレデリカ。私が速く全力を出していたら貴女を死なせずにすんだかもしれないのに」
「星華! 速く構えて!」
リアンユの鎌がすぐそこまで迫っている。だが焦る必要はない。何故なら避ける必要がないから。
「属性解放・氷神!」
星華から放たれた氷の息吹がリアンユを吹き飛ばす。
「星華、貴女もしかして」
「さぁ行くよウンディーネ。あいつを倒してみんなの後を追うよ」
そよ風が吹き星華の左目にかかる髪がなびく。そこに見える左目は右目のような鮮やかな深紅の色ではなく全てを照らすような黄色の目をしていた。