出発
朝、百人近くの兵士達が城の前に並んでおり翔天達はその後ろに並んでいる。
昨日はしっかりと休み、体調を万全に調えた星華も元気そうだ。
「星華体調の方はもう大丈夫なんだよな」
「お陰様でこの通り」
その場でクルッとバク転を決めもう大丈夫だとアピールする。
「その様子だと本当に大丈夫そうだね」
「うん。今日はみんなの為にも一生懸命頑張るぞー!」
朝からかなりのハイテンションな星華についていけない。
「おい龍太」
「なんだよアルナール。そんな小声で」
ハイテンションな星華に圧倒されている翔天と彩姫をおいてアルナールが小さな声で話しかけてきた。
「できるだけ星華から目を離すな」
「どうしてだよ」
「俺も確証はねーんだが何か嫌な予感がしてな」
完全に見張る根拠ではないがこういう嫌な予感ってのは大抵当たってることの方が多い。
「分かったできるだけあいつを見てるよ。このことは翔天と彩姫には・・・・・・」
「あいつらには言うな。あいつらはお前と違って冷静に物事を判断する力が低い。だからあいつらには目の前の事だけに集中してほしいんだ」
なんだかんだアルナールはアルナールなりに周りを見ておりみんなの為に気を使っている。
本当にアルナールが敵ではなく味方としていてくれるのがどれほど心強いか今更ながら実感する。
「何二人でひそひそしてるの! さっ、もっとテンションを上げていこうよ!」
「うるせー朝からそんなに騒いでられるか!」
少しアルナールが星華を心配する理由が分かった気がする。
ショウや彩姫が気づいているのかは分からないが今日の星華は何か無理して明るく振る舞っているような気がする。
「あっそろそろ始まるみたいだからみんな静かにして」
並ぶ兵士達の前にセバスとニャルトが出てきた。
ニャルトはいつも通りぶかぶかのマントをつけていたがセバスは鎧を着けており腰には剣がぶら下がっている。
「みんニャ、まずよくこの短期間で準備することが出来たことを誉めるニャ」
これからよくある偉い人の長い話が始まるのかと思ったが頑張るニャとそれだけを言うとセバスに代わった。
「みなさんこれから作戦を開始しますがその
前に作戦内容を確認したいと思う。」
事前に兵士達も作戦内容は把握しているはずだがよほど不安要素を消していきたいのだろう。
「簡単に言うぞ。作戦内容は捕まっているレイスの姉妹の救助。そして魔族の残党アストロギアの討伐以上だ」
こう聞くと簡単そうだが俺らはまだアストロギアの実力を知らない。分かるのはアルナールより強くイカれていることだけだ。
「恐らく厳しい戦いになると思う。だがこの国の未来のためにも負けるわけにはいかないのだ!」
「「うぉぉぉぉ!!」」
さすが獣人族。普通の人とは違い迫力がある。
「全員生きて帰ってくるニャ」
「「おぉぉぉぉ!!」」
今度は翔天や彩姫、星華も楽しそうに混じる。
「こいつらに緊張感というのはないのか?」
「残念ながらないね」
先が思いやられるスタートだが今更引き返すことが出来ない。
セバスの出発の合図と共にアルナールを先頭に俺達はアストロギアの隠れ家であるもう一つの研究所に向かった。