優しさ
「おい何処に行こうとしてるんだ」
「ギクッ」
こっそり窓から部屋を抜け出して走りに行こうと思っていたらアルナールに見つかってしまい無理矢理ベッドまで運ばれた私はアルナールに怒られている。
「昨日あれほど大人しくしとけと言っただろ。お前の戦闘能力は今回の作戦にも重要なんだからしっかりと体を休めとけよ」
「ごめんなさい」
まさかこんな風にアルナールに怒られる日がくるとは思っておらず少し嬉しいような気がした。
「はぁ~。ったく何で今回の英雄は無茶ばかりするやつなんだよ」
椅子に座り項垂れるアルナールを見ると本当に私達と同じ人間に見える。
「星華は俺を恨まないのか」
「きゅ、急にどうしたのそんなことを聞いて」
「お前の大切な人を奪ったのは魔族なんだろ。なら同じ魔族である俺の事が憎いんじゃないか」
「フフそんなことないよ。たしかに私は魔族のことが許せないけどアルナールは魔族じゃなくて私達と同じ人間だし」
そう言うとアルナールは照れたのか顔を別の方向に背ける。
「はぁ~お人好しばっかの英雄だな」
ため息をついた後アルナールが何を言ったのかは聞き取れなかったがたぶん悪口ではないと思う。
「アルナール、私のこと色々心配してくれていてありがとう」
「うっ、うっせっー。俺にはお前らの力が必要なんだから不調で戦えないなんて俺が困るからこうやって気にかけてんだよ」
だいぶ素のアルナールがどんな人物かがわかってきた。それは素直になれないツンデレな性格なんだろう。
「はいはいアルナールがなんと言おうとアルナールは私が心配でしょうがないって思ってるから」
「ああんお前いい加減にしろよ」
立ち上がるアルナールは今にも私を殴りそうだ。
「アルナール私これでも一応怪我人扱いなんだから暴力はダメよ」
「くそっこんなときに限って怪我人のふりしやがって」
アルナールはそのまま握る拳を下ろすとそのまま部屋のドアまで歩いていった。
「あれ私の監視はしなくていいの?」
「うるせーお前の相手をするのはもう疲れたんだよ。それにもうすぐ別の監視が来るはずだからな」
そう言うとアルナールは部屋から出ていった。
数分ぐらい沈黙の間が続き心細くなってきたときドアの開く音がした。
「星華元気かー!」
「見舞いに来てやったぞ」
「ホノちゃん調子はどう?」
入って来たのは私の大切な親友達だ。
「みんなもう特訓はいいの?」
「あぁ。今日は久し振りに四人で楽しく会話しようかなと思ってきたんだ」
「ホントにやったー! そこに椅子があるからみんな速く速く」
急にみんながそんなことを言い出してきたのは分からないが今はそんなことどうでもよく楽しくみんなと話したいそう私は思った。この関係がいつまで続くか分からなかったから。