忘れられない思い出
暗い森を真っ赤に照らす赤い炎の中私は走っている。
「星華もう少しの辛抱よ。あと少しで振り切れるから」
隣で一緒に走る少し歳上なお姉さんが励ましてくる。
「おいあっちにいるぞ」
「ホントだ速く捕まえようぜ」
後ろからは体の大きさがそれぞれ違う不気味な姿をしたいわゆる亜人というものが追っかけてくる。
「ダメこのままだと追い付かれるよ」
お姉さんに助けを求めるように目を向けるとお姉さんは何かを決意したような表情をしていた。
「星華。星華はこのまま走り続けなさいその間に私があいつらの足を止めるから」
「そ、それって」
それは自分を犠牲にして私を助けるということ。
「大丈夫、私が強いのを知ってるでしょ」
「で、でも・・・・・・」
強いのは知っているけど相手は複数いる上に一体一体の力がとてつもなく強い。
「別にあいつらを倒そうってわけじゃないんだから。星華が逃げ切るまでの時間稼ぎだから」
それでもこんな中で戦うにはあまりにもこちらが不利だ。
「星華、私が嘘をついたことある?」
お姉さんがそう問いかけてきたので首を横に降る。
「でしょ。だから絶対に星華に追い付くから・・・・・・」
「あそこだ!」
「逃がすなっ!」
気づけば亜人の集団が近くまで来ていた。
「もう時間はないわね。さっ、速く行って」
「でも、でも」
「いいから速く!」
ついに怒鳴ったお姉さんにビクッとしたがここまできたらお姉さんを信じるしかない。
「絶対に追い付いてよ」
「約束だからね」
亜人達の方にお姉さんが向かうと同時に星華も反対側に走り出す。
「絶対だよ」
遠くから鉄と鉄のぶつかる音が聞こえる。
「大丈夫。絶対に追い付いてくる」
不安になる気持ちを落ち着かせるために何度も何度も自分に言い聞かせる。
しばらく走ると大きな湖の所に出た。
「たしかここって・・・・・・」
逃げよる途中で大きな湖の所まで行ければ大丈夫だとお姉さんが言っていた。
「ここまで来ればもう大丈夫なのかな・・・・・・」
とりあえずここでお姉さんが来るのを待つことにし森の方を向くといきなり大きな爆発がしその爆風に巻き込まれ湖に落ちてしまった。
幸い泳ぎは得意な方なので直ぐさま水面から顔を出すと目の前には信じられない光景が広がっていた。
先程までは炎により燃えていた森が無くなり大きなクレーターが広がっている。
「嘘これってさっきの爆発のせい」
湖から出て辺りを見渡すとその場所は自分が走っていた道だった。
「嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘」
お姉さんが亜人達と戦っていた場所もクレーターのある場所だったということはお姉さんと亜人達はあの爆発に巻き込まれたということ。
「うっ、ううう」
どんどん涙が溢れてくる。
「リアお姉ちゃん・・・・・・リアお姉ちゃーん!」
「リアお姉ちゃん!」
目を覚まし起き上がると見知らぬベッドの上にいた。
「あれここって? それに今のは・・・・・・夢?」
嫌な夢を見ちゃたなーと思っていたら隣から声がした。
「よかったやっと目を覚ましてくれて」
隣を見ると一安心したようにホッとする彩姫がいた。
周りを見ると彩姫たまけでなく翔天やニャルトに側近、それに龍太やアルナールまでいた。
「あ、あれ? 龍太にアルナール、なんでここにいるのそれに私どれくらい寝ていたんだろ後ミカはどうなったの」
たくさんの事が一度に起こりすぎて軽いパニック状態になってしまった。
「落ち着けってちゃんと順番に話してやるから」
「ご、ごめんつい」
それから自分が気を失って約二時間ぐらいの間に何があったのかを教えてもらった。
アルナールの手引きにより研究所に捕まっていた人全員がこの城に避難してきたこと。側近の名前がセバスということ。ミカが何処かに連れていかれたこと。そして研究所が跡形もなく消えていたことを。
「寝ている間にそんな事が起こってたんだね」
今までの状況を頭の中で整理しているなかみんなは何か言いにくそうな顔でこちらを見ていた。
「あれみんなどうしたのそんな顔をしてこっち見て。私の顔に何かついているの・・・・・・」
そこまで言うともしかしてという嫌な考えがよぎり慌てて左目に前髪がかかってるか確認した。
「安心してホノちゃん。誰もホノちゃんの左目は見ていないから」
彩姫がそう言うと周りのみんなは頷いていたのでホッと胸を撫で下ろす。
私が左目を隠している理由を知られたくなかったから誰も見ていないのはよかった。それに起き上がったときもちゃんと隠れていたから本当に大丈夫なはずだ。
「じゃあなんで私を見てるの」
他に何か思い当たることもなく腕を組考える。
「いや、星華に聞きたいことがあってな」
「えっ何?」
翔天は言いにくそうだったが意を決したように聞いてきた。
「星華はあの女性・・・・・・リアンユのことを知ってるのか」
「っ!? なんでその名前を・・・・・・それよりもどうやってあの女性の名前を知ったの」
「あの女性はアルナールの仲間だったらしくてアルナールが教えてくれたんだ」
部屋の隅で立っているアルナールの方を見ると真っ直ぐにこちらを見ている。
「俺もリアンユのことは詳しく知らねーんだ。お前が何か知ってるのなら話してくれ」
無愛想だったがアルナールがそう言ったせいで余計に話さないといけない義務感が出てきてしまう。
「リアンユは・・・・・・この世界に来た私を親の変わりに育ててくれた大切なお姉ちゃんなの」
それを聞いたみんなは驚いていた。