拐われたミカ
ミカと一緒に研究所について話終えた翔天はニャルトと側近の人がヒソヒソ話しているのを見ている。
「疑うようで悪いんですがその話は本当なのですか」
「はい。先程も話した通りにここにいるミカがその研究所から逃げ出した人ですから」
そう言うとニャルトは複雑な顔をしている。
「あのどうかしたのですか」
「うーん、実はあたしはその研究所について全く知らないのニャ」
「えっ!? それはどういうことですか」
国民でも知っていた研究所のことを王様が知らないのは信じられなかった。
「本来なら外から来たレイスは我々が保護して城の中にある研究所にいるはずなのです」
「そうなんですか!」
「はい、我々は魔女の力が暴走するのを防ぐためのワクチンが完成するまでレイスはこの城で暮らしてもらってるのです」
国民の言ってた研究所がここの城ならつじつまが合う。
「つまり星華が見つけた研究所が偽物ということか」
「そうなりますね」
ここで星華が単独で研究所を探しに行ったのが役に立つとは思わなかった。
「ありがとう星華。けどホントによく見つけたな」
「・・・・・・うん、偶然大きな建物が見えたしそれにきっと運が良かったんだよ」
この時の星華は何か隠してそうな感じがしたが恐らく気のせいだとろう。
「うーん、まさか偽の研究所があるとはニャ。これは今すぐにでも兵を連れて調査に行かなきゃだニャ」
「話を信じてくれるんですか」
「あたりまえニャ。そもそも偽の研究所を見つけてくれたんだからお礼を言うのはこっちニャ」
心の底から思う、本当に心の広い王様でよかったと。
「やったなミカ! これでみんな助かるぞ」
「はい、ありがとうございますショウ」
嬉しさのあまり涙を流すミカにつられ何故かニャルトまで目元をうるうるさせていたが本当に話し合いが無事に終わってよかった。
これで所長させ捕まえればこの国で起ころうとする事件を防げるそう確信した時、ガシャーンと謁見の間にある大きな窓ガラスが割れそこからあの赤い鎧を纏った謎の女性が入り鎌で翔天に斬りかかってきた。
「うぉ! あぶねっ!」
縦に降り下ろしてきたおかげで難なく避けることができた。
「ニャ、ニャんだニャだ」
「兵士達よ今すぐ其奴を捕らえろ!」
「はっ!」
側近の指示のもと複数の兵士が謎の女性を囲み一志乱れぬ攻撃をしたが謎の女性は鎌を使わず全て避けきる。そのスピードは星華とほぼ同じだ。
「誰なんですかあの人は」
「ごめん私達もよく分からないの」
ミカの声に反応したか謎の女性はミカの方に視線を向け叫んだ。
「属性解放!」
「何っ!」
謎の女性から急な突風が吹き荒れ兵士達やニャルト、翔天達を吹き飛ばした。
いきなりの出来事で対応できず壁に強くぶつかった翔天は追撃に備え立ち上がろうとしたが謎の女性はそのまま翔天達を攻撃することなく倒れているミカを肩に担いでいた。
「まさかあいつの狙いは最初からミカを・・・・・・くそっ!」
なんとか立ち上がろうとしたが強くぶつかりすぎたせいか体中が痺れているような感覚がして中々立ち上がらない。
「ミカ目を覚まして!」
彩姫の呼び掛けに反応してないのを見ると先程壁にぶつかった勢いで気を失ってるのだろう。
割った窓ガラスから出ようとしたとき背後から星華の回し蹴りが襲いかかる。
「っ!」
星華の回し蹴りをなんとか避けた謎の女性だったが爪先が仮面だけを捉えており仮面を半分だけ破壊した。
「えっ・・・・・・嘘」
露になった謎の女性の顔の半分を見た星華は何故か動きを止めてしまいその一瞬の隙をつかれ右手から放たれた突風に吹き飛ばされた星華は壁に激突しそのまま気を失った。
「ホノちゃん!」
倒れる星華に彩姫が急いで移動して無事を確認していた。
「任務完了これより撤退する」
それだけを言い残し謎の女性は窓から飛び下り姿を消した。
「ま、待て! ミカを・・・・・・ミカを返せ!!」
翔天の叫び声は虚しく響きわたった。