研究所からの脱出
ここに来て二度目の朝、ずっと研究所の中にいるため本当に朝なのかはよく分からないが、目を覚ました龍太は辺りを見渡し誰か足りないような気がした。
「あれ? 気のせいかな一人いない気が・・・・・・」
寝ている人達の顔を確認していくとようやく誰が居ないのかが分かった。
「ミエがいない!?」
自分が目を覚ますときミエはいつも先に起きていたため今日、目を覚ましたときにミエの姿が見えないのに違和感を抱いたのだろう。
「一体何処に? まだ実験する時間じゃないしな」
一人で考えても仕方がないため龍太は急いで寝ているマリオク達を起こす。
「おい、起きろ!」
「何だよぉ、もう少しぐらいいいだろ~」
「ミエが何処にもいないんだ」
「な、なに~!!」
マリオクは飛び起きるや辺りを見渡す。
「ホントだ何処にもいねぇー。おいお前ら起きろ緊急事態だ!」
まだ眠ってる者を無理矢理たたき起こしたマリオクはみんなにミエがいないことを伝えた。
「たまたま早く実験が始まっただけじゃないですか?」
「俺もそう思いますよ。さすがにミエ一人じゃ脱出できないはずですし」
みんなの言う通り、ただ実験が早まっただけなのかもしれない。けど何故か先程から妙な胸騒ぎがしてしょうがない。
みんながミエのことで話し合ってるときガシャーンとガラスの割れる音がした。
「なんだ!」
ガラスのあるドアの方を見ると一面に張ってあったガラスは粉々に砕けておりその近くには剣を持ったアルナールが立っている。
「おい龍太! とっととここを脱出するぞ!」
こちらに近づいてくるアルナールは龍太の手枷を壊した後、次々と他の人達の手枷も壊していく。
「どういうつもりだよアルナール! 俺とお前はまだ敵同士のはずたろ!」
「うるせー! お前が早く脱出しないせいでアストロギアが次の段階に進んだんだよ!」
何がどうなってるのかが全く分からない。
「次の段階ってどういうことだよ! それにアストロギアって誰なんだよ!」
「詳しい説明はここを出てからだ。今言えるのはこのままここにいるとお前ら全員殺されるということだ」
殺されると聞かされた瞬間、今の状況が呑み込めず、ぼんやりしていた他の者が慌て出した。
「とにかく生き残りたい奴は俺の後についてこい!」
走り出すアルナールに取り合えず着いていくことにした。
先頭をアルナールと龍太が走りその後ろからマリオクが他の人達を先導している。
ガラスの割れた音を聞き付けてきた兵士達が来たがアルナールと龍太の連携により簡単に退けていくうちにビーッビーッと警報が鳴り出した。
「ちっ、ついに警報が鳴っちまったか。おい後少しで出口だから最後まで走れよ!」
アルナールは後ろを見て疲れている人に叱咤激励していく。
そんなアルナールを横目で見るとアルナールの腹部から血が出ていた。
「お前そのケガどうしたんだよ」
よく見れば腹部だけでなくあちこちから血が出ている。
「少しヘマをしただけだ。この程度のキズしばらくしたら治る」
「けどその血の量はかなり危険だぞ」
「心配するな俺はお前らと違う。今は俺のことより脱出することだけを考えろ」
本当に大丈夫なのか不安だが回復術を使えるものが誰もいないためアルナールの言う通り、脱出することだけを考えた。
「それでアルナール、脱出したとして何処に向かうんだ」
「城だ。そこならお前ら全員を助けてくれるはずだ」
まさか脱出した後のみんなのことまで考えていたとは思えず本当にあのアルナールなのかと疑うぐらいだ。
「無事脱出できたらちゃんと話してくれるんだろな」
「あぁここまで来てしまったら話すしかないだろ」
「よし約束だからな」
そう言って拳をアルナールの方に突きだしたらアルナールはキョトンとした顔をしていたがすぐにニヤッと笑うや突きだした拳に自分の拳を合わせた。
「あぁ約束だ」
今この時、龍太はアルナールのことを信頼できる仲になったと感じていた。