結果報告
宿屋に戻ったときには既に辺りは暗くなっていた。
宿屋の広間に誰もいなかったため借りている部屋に行ってみると三人とも待ちくたびれた顔をしていた。
「遅い!」
「ご、ごめん。森の中が思ったよりも複雑で中々抜けだせなかったんだよ」
怒鳴る彩姫に弁解するが彩姫は頬を膨らませたままだ。
「まあまあちゃんと帰ってきたんだから許してあげようよアヤちゃん」
「私もそう思います。怪我だってしてないみたいですし」
二人のお陰で何とか溜飲を下げてくれた彩姫はそのままベッドに腰を掛ける。
「それでアルナールと何を話したの」
星華にそう聞かれたため今だに不機嫌な彩姫を横目に見ながらアルナールと会話した内容を伝える。
「つまり今回の黒幕は研究所の所長っていうこと?」
「たぶんそうだと思う」
話を聞いて何かを考えてる彩姫と星華だがミカだけは怯えていた。無理もないミカとその姉が計画に利用されると言われれば怯えるのもしょうがない。
「大丈夫だよ必ず僕らがミカのことを守るし研究所に捕まってる人達も助けだすから」
「ありがとうございます。少し落ち着きました」
ぎこちない笑顔だが少しは元気が出たようだ。
「ショウ、実は私達も調べれる範囲でこの国と研究所のことを調べてみたけど、やっはり国民はみんな研究所のこと話してくれなかったよ」
「そうなんだ」
アルナールのお陰で少しは前に進んだもののあの研究所が何なのかはまだ分からないままだ。
「でもウンディーネのお陰でこの国の王様が研究所に全く関与してないことが分かったの」
「それってホント」
「えぇ。今日ずっとウンディーネが王様のことを見て調べてたから間違いないわ」
名前が出てもウンディーネが現れないのは余程疲れているのだろう。
「ならアルナールの言う通りあの研究所の所長さえどうにかすれば・・・・・・」
「それはまだ無理だと思うわ」
彩姫に高まってきた気持ちごと言葉を遮られる。
「なんでまだ無理なんだ?」
「仮に私達が研究所を勝手に破壊したとして王様や国民の人達はどう思う?」
「あっ・・・・・・」
無理な理由が分かってしまった。
勝手に研究所を破壊したら完全に悪者扱いにされるだけでなく帝都バーネリアの人達にも迷惑を掛ける可能性だってある。
「じゃあどうすればいいんだ」
「落ち着いて。ショウがアルナールに会っている間、私達で考えたことがあるの」
「考えたこと?」
「うん。実は明日、王様に会いに行くつもりなの」
たしかに王様に会って研究所のことを話せば城の兵士達が動いてくれるかもしれない。こちらにはミカもいるから話を信じてくれる可能性もあるが。
「でもどうやって王様に会うつもりなんだ。僕らは王様と面識がないんだから会うのは難しいだろ」
「そこは大丈夫だよ。ここの王様は一般の人、特に他の大陸から来た人とよく謁見してるらしいの」
「そうなのか」
「うん。それで今日行ってみたんだけど、今日は人数的にもう無理だから明日の昼頃に来るよう言われてるの」
既に星華が王様と会える手筈を整えているらしい。
「相変わらず行動するのが速いな」
「フフフ、それが私の取り柄だから」
星華の行動力にはいつも助けられてばかりだ。
「ありがとう星華。星華のためにも明日は必ず王様を説得しないとな」
「大丈夫? いつも龍太に言い負かされてるけど」
ピンポイントで人が気にしていることを言ってのける彩姫に苦笑いを送る。
「大丈夫だって明日は上手くやるから」
「分かったわ。明日はあまり期待しないで見てるから」
ズコッと転けそうになったが何とか踏みとどまる。
「大丈夫ショウ?」
「大丈夫だよミカ」
たまに彩姫が毒舌を吐くから調子が狂うことがあるが龍太と一緒じゃないだけましだ。
「と・に・か・く明日は上手くやるからみんな僕を信じてくれ」
「今さら何言ってるの私はいつも信じてるから」
「私も一応信じてるからね」
「私もショウを信じる」
笑顔で言う星華、微笑みながら言う彩姫、必死な顔で言うミカ、三人の信頼に答えるためにも失敗は許されない。
「明日は勝負の日だ!!」
大声で自分に渇を入れた翔天は明日のためにも自室に戻り寝ることにした。