偵察途中で
太陽が昇り新たな一日が始まる中、星華は日課の早朝ランニングと偽って研究所の下見に来ていた。
「う~ん、これ以上行くと警備に引っ掛かるなー」
研究所から一キロ近く離れた所で星華は木の上から様子を見ていた。
「思ってたより大きい研究所ね。ここからでも十分見えるなんて」
だが、あくまでも木の上からだと見えているわけで下に降りると生い茂った木々により研究所がまったく見えないのだ。
「なんで森の中に建てるかなー。こんなんで兵士達は迷わないのかなー」
研究所の場所と大きさを把握し後は何処まで行けるか挑戦しようとしたとき。
「こんな所でなにしてんだー」
いきなり後ろから声をかけられ振り返るとそこにはアルナールが立っていた。
「なんでアルナールがここにいるの?」
「またそれかー。俺はお前らの敵だそんなこと言うわけないだろ」
「それもそっかー。じゃあここにいるってことは怪しい動きをする私を捕まえに来たってこと?」
もしそうなら全力疾走で逃げるつもりでいたがよく見るとアルナールは剣を持っておらず手ぶらの状態だった。
「本来ならここでお前を捕まえるか殺すかのどっちかだったが今はそんなつもりはねーよ」 「じゃあなにしに来たの?」
今思えば不思議なことだ。最初アルナールと出会った時と今のアルナールの表情は別物だった。
最初の狂気に満ちた表情はなく、どことなく優しい表情をしている。
「翔天に伝えてほしいことがあんだよ」
「何?」
「昼頃に街外れにある湖に一人でこい。と伝えてくれ」
昔のアルナールだったら翔天と二人きりにするのは反対だったが今のアルナールなら大丈夫な気がする。
「・・・・・・分かったわ」
「頼んどいてなんだがホントにいいのか? 俺はあいつとまた殺し会うかもしれないんだぞ」
「うん。あの時ショウはあなたと一緒に戦いた言ったことはあなたのことを信じるってことでしょだから私はあなたを信じて了解したのよ。それに今のショウなら負けないと思ってるしね」
「・・・・・・甘いな」
そう言いながら軽く笑うとアルナールは姿を消した。
「大丈夫。今のアルナールならきっとショウの力になってくれる」
根拠のない自信だったが何故かそんな気しかしなかった。
「そろそろ戻らないとみんな心配するよね」
下に降りると迷うかもしれないので木の上を飛びながら街の宿屋まで帰っていった。