守りたいこの笑顔
その日は“この国を救った英雄”という名目で行われたパレードはかなりの盛り上がりを見せた。
馬車で町の入り口から城までの道を馬車で移動する翔天達四人を町中の住人が喜び感謝の声を上げていた。
今までたくさんの人に感謝されたことのない翔天達は少し恥ずかしかった。
そしてその夜、翔天達は城でパーティーをしていた。
住人達は城の庭で、翔天達や一部の兵士などは城の中でやっていた。
たくさんの料理が並び楽しく過ごしていたが翔天だけは城のテラスで町を眺めていた。
「なに見てるの?」
「ん? あぁ彩姫か」
隣まで来た彩姫は翔天と同じように町を眺めた。
「少し町をね。たった一週間でここまで建て直すなんてすごいよな」
「そうね。みんな頑張ってたからね」
下を見れば住人達が楽しそうに騒いでいる。
「みんな助かってよかったな。ホント彩姫がウンディーネと契約してくれていて助かったよ」
「フフフ、そうね今回一番頑張ったのはウンディーネかもね」
中を見るとウンディーネもみんなと一緒に料理を食べていた。
「にしても精霊もご飯を食べるんだな」
「まぁ精霊も私達と同じように生きているってことよ」
再び町を眺める彩姫の顔は嬉しそうだった。
「なんか嬉しそうだな。」
「だって二度とこんな楽しいことなんか起きないって思ってたから」
なにかを思い出したのか少し悲しそうだった。
きっと海賊の人達と過ごしてた日々を思い出してるのだろう。
「ねぇ、ショウが守りたい大切な人って誰なの」
急にそんなことを聞かれつい彩姫の方を向いてしまった。
「フレデリカに聞いたの、ショウが守りたい大切な人がいるから強くなりたいって」
「へぇーそうなんだ・・・・・・でなんでそんなことを聞くんだ?」
「んーなんでたろう。ただショウが大切にしている人ってどんな人なんだろうなって思って」
とても彩姫のことなんだとは言いにくかったがこれはいい機会だと思い言ってみることにした。
「・・・・・・彩姫」
「えっ!?」
「僕が守りたい大切な人は彩姫、君なんだ」
まさか自分のことだとは思ってなかったらしくあたふたしている彩姫がなんだか可愛く見えた。
「えっ、えっ、なんで私なの」
「彩姫が僕のことを助けてくれたから」
シンプルな理由だった。翔天は彩姫に出会う前かなり手酷い苛めを受けておりクラスのみんなも自分が苛められたくないから無視をしていた。
龍太と星華にはこんな目にあってほしくなくて関わらないようにさせていたため二人も悔しそうにいつも見ていた。
そんなときに彩姫が転校してき苛められている翔天を身を呈して助けてくれたことを翔天は今でも覚えている。
「でも私は当たり前のことをしただけでそんな守られるような人じゃないよ?」
「君にとっては当たり前のことかもしれないけど僕にとっては命の恩人だから」
「でもー・・・・・・こう言うのもなんだけどたぶん私の方がまだ強いと思うよ」
素直に胸が痛い。いくら二種類の属性が使えるとはいえ技術、力は確かに彩姫の方が上だ。
「うんそうだね。まだ彩姫の方が強いかもしれないけどいつか彩姫より強くなって彩姫のことを守れるように強くなるから・・・・・・」
いきなり手を握られドキッとし、彩姫の方を見るととても嬉しそうに笑っていた。
「えぇもし私より強くなったらその時は私のことを守ってね」
この瞬間、翔天は新たに決意をした。
ーー守りたいこの笑顔を。