終戦
翔天の提案にアルナールは驚いていた。
「お前は馬鹿か! 俺はお前らを殺し、お前らの大切な人を殺した憎き仇なんだぞ!」
アルナールの言っていることは間違いないむしろ正しいぐらいだ。
「確かにお前はいろんな人を殺してきた。彩姫の大切な人達も殺した、僕の師匠も殺した・・・・・・でもだからと言ってお前を殺すのは間違ってると思うんだ」
後ろでは龍太や星華がやれやれと反応していたが彩姫は何か言いたげだった。
「ショウ、貴方の言いたいことは分かるけどアルナールを殺さなかったとして私はそいつが一緒に戦ってくれるとも思わないし、逆に生かしたことでたくさんの人が犠牲になると思うの」
その通りだ。ここで助けたところでアルナールが手をとってくれるわけでもないし他の所でまた悪さをすることもあるかもしれない。
「でも僕はこいつと・・・・・・アルナールと共に戦いたいと思っているんだ!」
その言葉に偽りがないのは確かなことだ。
「甘いあまりにも甘すぎる。普通は俺を憎しみのままに殺すだろ」
「フレデリカ師匠を殺したのは許せないけど憎しみのままにお前を殺すことはたぶんフレデリカ師匠が認めないと思うし」
先ほどまで怒っていたアルナールも翔天の優しさに充てられてか微かに笑っていた。
「まぁこれは僕の考えなんだけどみんなはどう?」
翔天は自分の考えにみんながどう思っているのか気になり聞いてみた。
「私はショウの意見に賛成だよ。私も出来ることなら殺したくないと思っているから」
星華が自分と同じ思いをしてくれていたことに嬉しさを感じる。
「私もショウの意見に賛成よ」
意外にも彩姫が賛成してくれるとは思わなかった。
「本当にいいの彩姫?」
「今更何言ってるのよ。まぁそれにさっきこいつの顔面に渾身の一撃をいれたから私の復讐はもう終わったし」
一瞬無理をしてるんじゃないかと疑ったがその顔は確かに満足していた。
「俺もショウが後悔しないのならそれでいいと思うぞ」
みんなからの確認も終え翔天は再びアルナールの方を向き手を差しのべた。
「アルナール、僕らと一緒に世界を救おうよ」
だが差しのべられた手をアルナールが取ることはなかった。
「悪いが俺はお前らと一緒に戦うことは出来ない。俺とお前らは違うからな」
何を言っているかがわからなかったが一つだけ言えることがある。
「同じたよ。アルナールは僕らと同じ人間だよそれだけははっきり言える」
想定外の答えが返ってきたことにアルナールは戸惑っていた。
「本当にお前は甘いな」
優笑うアルナールの顔は今までの狂気の顔が嘘だったかのように優しかった。
この瞬間ついにアルナールと心を通わすことができたと思った瞬間突如現れた赤い鎧を纏った女性が翔天とアルナールの間を割くように巨大な鎌を降り下ろしてきた。
「ショウ!」
なんとか避けた翔天は前を向くと謎の女性がアルナールを担ぎ上げていた。
「アルナール、ここに封印の扉はなかったから撤退するぞ」
「あっ! 待て!」
連れていこうとするアルナールを止めようと近寄ったが鎌から放たれた鎌鼬により近づけなかった。
「翔天、これが俺の答えだ。機会があればまた殺し会おうぜ」
それがアルナールの最後の言葉だった。謎の女性はアルナールを連れて完全に姿を消した。
「逃げられたみたいだな」
「そうね。でもまさかアルナールに仲間がいたなんて」
アルナールに仲間がいたことを初めて知ったがそれよりも龍太はあの女性が言った封印の扉という言葉が気になっていた。
「なぁショウあの女が言ってた封印の扉って・・・・・・」
気づけば翔天は落ち込んでいた。
「どうしたのショウ?」
「いや、あの時のアルナールの顔がなんか寂しそうに見えてほんとはアイツ、僕達と一緒に行きたかったんじゃないかと思ってね」
今となってはそれを確認することは出来なかったが次に会えたときにまた聞いてみればいいとそう思った。
こうして帝都バーネリア巡る長年続いた争いを終わらせた翔天達は救援に来た革命軍の仲間と共にフレデリカの埋葬を行った。