覚醒・水
「くそっ! 四人係でもダメなのか」
彩姫の加入により少しは有利になったはずの形勢なのにそれでもアルナールに攻撃を与えることが出来なかった。
「おいおいおいおい! 四人で戦ってその程度かよ雑魚が!」
アルナールの剣の一振りに合わせて炎が襲ってくる。
「“水よ集い彼の者を守れ水の盾”」
目の前に大きな水の膜が現れ飛んでくる炎を防いだ。
「悪いなウンディーネ」
だが正直これ以上はじり貧だった。
魔法を使おうにも周りの炎が邪魔をして使うことができず、ウンディーネはみんなを守るのに精一杯のようだった。
「ごめんなさい彩姫、そろそろ限界だわ」
ウンディーネは精霊であるため、マナが足りなくなれば回復のため契約者の体内に戻らなければならない。
「わかった、私達は大丈夫だからゆっくり休んで」
申し訳なさそうにウンディーネは姿を消した。
「アハハ、頼みの精霊もここまでのようだな」
アルナールの言う通りだ。
今までウンディーネが守ってくれたお陰でなんとかなっていたがウンディーネがいない今、この状況は非常に不味い。
「これで終わらせてやる。 はあぁぁあ!」
アルナールの剣に炎が集まりそれを一気に解放させ、爆炎が彩姫達を襲った。
「へー今のをガードしたか、属性解放者なだけはあるな」
間一髪の所でガードした彩姫だったが龍太と星華はガードしきれずに後方に吹き飛ばされていた。
幸い二人とも無事ではあったがかなりのダメージを受けており、直ぐに立ち上がることが出来ないようだったが彩姫の方もガードしたとはいえ精霊を長い間、使役していたため疲れが溜まっており膝をついてしまった。
「どうやらここまでのようだな」
動けない彩姫にアルナールは剣を構え近づいていたが急に立ち止まり剣を鞘に戻した。
「念には念をいれて距離を取って止めを刺すことのしよう。さっきみたいに邪魔されたくないしなー」
右手から火の玉が現れそれは次第に大きくなっていった。
「これぐらい大きければ例え誰かが庇ったとしてもまとめて焼き殺すことができる。」
どうにかして逃げようとしたが足が言うことを聞かずどうすることも出来なかった。
「さぁー今度こそ殺せる。もう俺の邪魔をすることは出来ない」
彩姫は先程、翔天に言ったことを後悔していた。
あれだけ偉そうに言って結局自分も同じ過ちを繰り返していたことに。
「綺麗に燃えて死にやがれー!」
アルナールの放った火の玉は真っ直ぐ彩姫の方にいき爆発した。
「彩姫ー!」
「アやちゃん!」
彩姫のいた場所は燃えていたが黒煙のせいで彩姫がどうなったか分からなかったが恐らくあれほどの威力だ生きている可能性は低いだろう。
「あぁ~やっぱりこうやって人を燃やした火は美しい~」
愉悦に浸っているアルナールに殺意が沸き上がってきたがよく見ると黒煙の中に誰かが立っていた。
「なっ! 今の攻撃で生きているだと!?」
黒煙が消え姿を現したのは彩姫を庇うように立つ翔天だった。
「ショウなんでそん・・・・・・な・・・・・・無茶・・・・・・を・・・・・・」
翔天の無謀な行動に怒った彩姫だったが翔天の体がどこも傷ついておらず言葉が途切れた。
「大丈夫、彩姫?」
「えっ、あっ、うんお陰様で」
さっきまでとは違い決意に満ちた顔をしている翔天に彩姫は少し戸惑っていた。
「貴様っ! どうやってあれを防いだんだ!」
「さぁあ、なんならもう一度試してみる?」
初めて怒りを露にするアルナールに全く動じず、それどころか挑発までしていた。
「調子に乗ってんじゃねーぞこの死に損ないがー!」
新たに放たれた火の玉は先程のよりも一回り小さかったがそれでもかなりの威力だった。
「心配しなくても大丈夫だよ彩姫」
不安げな彩姫に優しく微笑みかけた翔天は迫りくる火の玉に向かって右手を前につきだした。
「属性解放・水神!」
つきだされた右手から巨大な水の膜が出てきアルナールの放った火の玉を完全に打ち消した。
「なん・・・・・・だと!?」
これに関してはアルナールだけでなく彩姫達も驚いていた。
それは翔天が神の細胞を使った属性解放術を使ったからではない、翔天が火属性でなく水属性で属性解放したからだ。
「さぁ反撃の時間だ」