覚醒・火
燃える町中を駆け抜け、騒ぎ逃げ惑う人達を無視して翔天達はただひたすらにアルナールの待つ城に向かう。
崩れ落ちた瓦礫が道を塞いでおり城までかなり遠回りをしてしまいかなり無駄な時間を使ってしまった。
「少しスピードを上げるけど星華は大丈夫か?」
「今更・・・・・・何を・・・・・・言ってるの・・・・・・私は・・・・・・まだまだ・・・・・・上げれる・・・・・・から」
スピードを上げ進んでいくと道が二つに分かれていた。
「どっちに行くんだ」
「右っ!」
彩姫が勢いよく右を指したので翔天達は左に曲がった。
「ねぇなんで左なのよ?」
「方向音痴のお前が言った方の反対側に行けばたぶん着くだろ」
侮辱され怒る彩姫を宥めていたら城門が見えてきた。
「ほら、俺の言った通りだっただろ」
すっかりいじけてしまった彩姫を今度は元気づけ、翔天達は城門をくぐり馬から降りて城の中に入った。
「着いたのはいいけど・・・・・・アルナールは何処にいるんだ?」
城は大きく部屋がたくさんあるため探すのは一苦労のようだ。
「たぶん・・・・・・この階段を上った先の部屋にいると思う」
星華の指す扉は他のと違い少し豪華な扉だった。
「あの部屋にアルナールがいるのか?」
「うーん、ごめん私もなんとなくとしか言えたいんだけど・・・・・・あそこから何か変な気配がするから・・・・・・」
どの部屋に入っていいか分からないため翔天達は星華の指す扉を開けた。
その部屋は広く恐らく皇帝陛下と謁見するための部屋だと思われる。
「やっと来たかー、待ちくたびれたぜ」
部屋の奥で玉座に座っていたアルナールは翔天達が入ってきたのを見て立ち上がった。
「アルナールっ! 答えろなんでお前は罪のない人を殺すんだっ!」
「俺が人を殺す理由ねぇ・・・・・・」
答えずにゆっくりと近づいてくるアルナールに警戒して翔天達は武器を構えだした。
「いいから答えろっ!」
「ショウ、少し落ち着け」
急に立ち止まったアルナールは武器を出さずに外を眺めていた。
「・・・・・・俺が殺す理由を答えて何か意味があるのか」
「っ!」
確かに聞いたところで今までこいつに殺された人達が蘇るわけでもない。
「まぁ理由があっても答えるつもりはねぇーけどな」
「ショウ! こいつと話すのはもうやめよ!」
既に戦えるよう構えていた彩姫は我慢の限界のようだった。無理もない彩姫にとってアルナールは仇なのだから。
「せっかちだねぇー、ここまで来たんだサイコーに面白い物を見せてやるよ」
パチンっと指をならすと外からあの爆発音が聞こえてきた。それは一回で終わらず二回、三回と続いて聞こえてくる。
「お前何を・・・・・・?」
「クククッ外を見ればわかるぜー」
外を見るやそこは火の海になっていた。
それはまるで、七年前にアルナールが翔天達の町にやったときと同じ光景だった。
「ひどい・・・・・・」
「何てことをしやがるんだ」
燃える町を見てアルナールは笑いを押さえきれないようだった。
「なんで私達は時間通りに来たのに・・・・・・」
「俺がそんな約束を守ると思うか」
最悪の男だ。
普通に考えればわかったことなのにこの惨状はアルナールに対する認識の甘さが招いたことだ。
「私、久々に頭にきたかも」
「あぁ俺も同じ意見だ」
改めて構え直す龍太達にアルナールも遂に背中の剣を抜いたが翔天だけが構えていなかった。
「ショウ何をしているの!?」
「バカ野郎、早く構えろ!」
だが翔天はそんな声も聞こえずにただ燃える町を見ていた。
ーーなんでこんなことに。
燃える町が七年前の光景とフラッシュバックした。
ーーまた僕は守れなかったのか?
あの町には住人達を避難させているフレデリカ達がいたはずだ。
ーーまたあの男が・・・・・・
横を向けば不適に笑うアルナールの姿が目に入った。
ーーあいつが・・・・・・あいつがみんなを。
体の奥から熱い何かが沸き上がってくるのを感じた。
ーーゆるせない。
気づけば翔天は剣の柄を握りしめていた。
ーーゆるせない。
今にも溢れ出しそうな熱い何かはどんどんと沸き上がってくる。
ーー殺してやる。
龍太達を押し退け翔天はアルナールに近づいていった。
ーー絶対に殺してやる。
アルナールの顔を見ると底知れない怒りが込み上げてくる。
「お前・・・・・・は・・・・・・」
翔天の体のあちこちから小さな火が出ていた。
「ショウどうしたの?」
幼馴染みの声すらもう届かなかった。
アルナールに近づくにつれ翔天から出てくる火は次第に大きくなっていた。
「お前だけは・・・・・・」
アルナールも翔天の異常に気づいたようだがその表情は先程よりも嬉しそうだった。
「お前だけは絶対に・・・・・・」
もうこの溢れる熱い何かを抑えることは出来なかった。
「お前だけは絶対に殺す!!」
瞬間、翔天の体から紅蓮の炎が溢れだした。