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異世界で始まる英雄伝説  作者: 松原太陽
四人の英雄
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アルナールの狙い

 既に時刻は昼を過ぎていた。

 翔天達は馬に乗って帝都バーネリアに向かっていた。

 「ねぇショウ、帝都まで後どれくらいなの?」

 後ろでしがみついている彩姫は、馬が揺れるせいか少し疲れていた。

 「あと数十分でつくからもう少しだけ我慢してくれよな」

 翔天達が帝都に向かっている理由は今から一時間前に帝都バーネリアの皇帝陛下がアルナールに変わったからではなかった。

 「なぁ翔天、本当にアルナールはやると思っているのか」

 「はい! あいつは絶対にやります」

 翔天達が急いでいるわけは、アルナールが革命軍を炙り出すために手当たり次第に村を攻めると宣言したためそれを止めるために帝都に向かっている。

 「フレデリカ、他の部隊は必ずくるんだろうな!」

 「あぁ、多少の時間はかかるが十分遅れで帝都に着くはずだ」

 あまりにも急な襲撃予告のため他の革命軍の仲間の準備が出来ておらず、準備を待つ時間も惜しかったため翔天達五人が先行していた。

 「ホ、ホノちゃんほんとにしんどくないの?」

 「えっ・・・・・・いや・・・・・・まだ・・・・・・全然・・・・・・余裕・・・・・・だけど」

 星華以外は馬に乗っていたが星華だけは馬に乗らずに自分の足で馬と同じ速度で走っている。

 「いや、でも・・・・・・ずっと走り続けてるし」

 「心配する必要はないぞ彩姫、このペースなら星華はまだまだ走れるから」

 星華の足は馬よりも速く持久力もあるため基本的に馬に乗る必要がない。昨日みたいに、帰りに走れない可能性があるため馬に乗るが今回はある理由のため馬に乗っていない。

 「星華、もうすぐ帝都に着くと思うから先に兵が動きよるか確認してきてくれないか」

 星華はさらにスピードを上げあっというまに姿を消した。

 「ホノちゃんすごっ!」

 「相変わらずあの足の速さには驚きだな。」

 一分ぐらいで星華が戻ってきた。

 「みんな・・・・・・もっと急いで・・・・・・敵の・・・・・・兵が・・・・・・外に・・・・・・いたよ」

 翔天達は可能な限り馬の速度を上げ森を抜けた。

 抜けた先には遠くに帝都バーネリアが見え、外壁の門の近くにおそらく数は五万は超えるだろう。

 「やはり数は多いが・・・・・・これでも少ない方だろ」

 彩姫の拠点潰しのお陰で兵の数が半分くらいは減っていた。

 「とりあえずここで仲間が来るのを待って、一気に強襲した方がいいだろ」

 だが、翔天達四人は別の考えだった。

 「なぁ、僕達で行った方が早いと思うんだけど・・・・・・」

 「なっ・・・・・・!? 馬鹿か、たった五人で五万の軍勢に立ち向かうというのか」

 フレデリカの言っていることは間違っていない。だが、仲間を待っていたら確実に間に合わない。

 「今使えるなかで広範囲の魔法を使えばうまくいけばかなりの人数が減るぜ」

 「けど、それって・・・・・・」

 彩姫も戦うつもりでいたが龍太の作戦だと大勢の人が死ぬから反対らしい。

 「安心しろ。ちゃんと加減してやるから・・・・・・まぁそれでも一ヶ月ぐらいは動けない体にはなると思うが」

 彩姫は今までの拠点潰しで誰一人殺しておらずせいぜいしばらく動けない体にする程度に倒していたため、龍太の作戦は嫌だったが加減すると聞いて安心した。

 「じゃあ、龍太が魔法を使ったら私が突っ込むからみんなはそれに続くってことで」

 作戦が決まり龍太が魔法の詠唱にはいろうとしたときフレデリカがバッ...と腕をつかみ中断させた。

 「何をするんですか、これじゃ魔法を発動できないんですけど」

 握る手の力は強く、その顔は今まで見たことがないほど怒っていた。

 「だから馬鹿なマネはよせ、なぜお前らはこの人数で行けると思うんだ。・・・・・・たしかにお前達は強いかもしれないが・・・・・・あの数では囲まれて終わりになるのが目に見える」

 必死の訴えにも翔天達に届くことはなくフレデリカの手を振りほどき再び魔法の詠唱にはいった。

 「どうして・・・・・・どうしてお前達はこの人数で戦おうとするんだ」

 答えは決まっている。

 これは出発する前に翔天達は各々がある覚悟を決めていた。

 「・・・・・・フレデリカ師匠、確かにこの人数で戦おうとするのは馬鹿なことかも知れないのはわかっています。・・・・・・でも不思議とわかるんです僕ら四人が一緒なら出来るって」

 魔法の準備もできたようで翔天と彩姫は馬に乗り、星華はクラウチングスタートの構えになっている。

 「フレデリカ師匠はここで仲間が来るのを待っていてください」

 「あっ、待てお・・・・・・」

 フレデリカが呼び止める瞬間、龍太の魔法が発動した。

 敵陣営の中心で発動した魔法は爆風とともにかなりの人数が吹き飛んでいた。

 「行くよ、彩姫」

 馬を走らせその後ろで発動し終えた龍太が馬に乗っていた。

 「ウンディーネっ!」

 「呼んだ彩姫」

 ウンディーネを召喚した彩姫は星華と共に先行して戦うようお願いしていた。

 「わかりました。では、いって参ります」

 空を飛び、敵に近づいたウンディーネは静止し魔法の詠唱をしていた。

 星華は既に敵陣営の中心にいたがたった一人でかなりの人数を倒していた。

 「すごいホノちゃんってこんなに強いんだ」

 周りを囲まれどんどん湧いてくる敵に星華の蹴り技は確実に相手の頭を捉えており一斉攻撃にもその圧倒的なスピードで全く敵を寄せつかなかった。

 近くまで来た翔天達は武器を構えた。

 「属性解放!」

 彩姫の体から光の粒子が現れ彩姫の拳に集束された。

 「先に行くね」

 馬から飛び降りた彩姫は近くの兵士を片っ端から殴り飛ばしていた。

 「よしっ俺らもいくぞ!」

 翔天と龍太は同時に馬から飛び降りた。

 「おい! 新たに二人来たぞ!」

 司令官と思わしき人物の指示に戦っていない兵士が二人の方に向かっていった。

 「ショウ、俺はさっき指示を出していた奴を倒すからお前は別の指揮官を探せ」

 龍太は軽々しく槍を振り回し剣ごと敵を叩き潰していた。

 「正直僕はこういう一対多数の状況は苦手だけど・・・・・・今の僕なら大丈夫な気がする」

 剣を構え迫ってくる敵に対し翔天はまだ剣を抜いていなかった。

 「あの赤い野郎、武器を構えてないぞ」

 「チャンスだ! あいつを先に殺るぞ」

 構えていない翔天に敵がチャンスといわんばかりに剣を降り下ろした。

 「三日月流抜刀術」

 敵をギリギリまで引き付けた翔天は一気に剣を抜き放った。

 「旋風烈斬」

 剣を抜いた勢いのまま一回転した翔天の周りを無数の鎌鼬(かまいたち)が敵を切り裂いていった。

 三日月流はフレデリカが使う剣術でそこに翔天が抜刀術を取り入れたこの技は通常は剣の間合いの敵しか斬れないが抜刀することにより威力と範囲を上げていた。

 「よし、この調子で行くよ!」



 空中で魔法を詠唱していたウンディーネは四人の戦いぶりに息を飲んでいた。

 「私が思ってってたよりも遥かに強い・・・・・・これなら前の英雄が倒せなかったあいつを倒せるかもしれない」

 魔法の詠唱が終わり、四人のいない場所に目掛けて放とうとしたとき、ドォーンと爆音がし発動をするのをやめた。

 「今のは一体?」

 気づけば下で戦っていた翔天や敵兵も戦いをやめていた。

 「なんだ今の音は」

 「それよりなんで俺はこんなとこにいるんだ」

 今の爆音で何人かの兵士がアルナールの洗脳が解けていた。

 「えっ、一体何が起こっているんだ」

 翔天は動揺している兵士を見て混乱していた。

 「ショウ、たぶんこの兵士達はアルナールに洗脳されていたんだと思う」

 アルナールが洗脳術まで使えることに驚きを隠せなかったが問題はこの爆音がどこから聞こえたかだ。

 「彩姫ーっ!」

 空中から降りてくるウンディーネを見て翔天達は彩姫の周りに集まった。

 「ウンディーネこの爆音がなんだったかわかる?」

 そう言われウンディーネが帝都の方に視線を向けたのを見てそちらを見ると帝都からいくつもの炎が上がっていた。

 「なっ! もしかしてさっきの爆音はこの中からか!」

 どうやらそのようでウンディーネが空から帝都内で何が爆発しその影響で家に火が付き燃えているらしい。

 「嘘っ! なんで帝都が燃えているの」

 衝撃的な出来事に星華は口を押さえていたがそれよりも洗脳の解けた兵士達の方がパニクっていた。

 「まさか革命軍の誰かがやったのか!」

 そんなはずはなかった。革命軍の目的は帝都奪還だから破壊しては意味がない。

 「翔天ーっ!」

 背後から名前を呼ばれ振り返ると仲間を引き付けたフレデリカがやって来た。

 「大丈夫か、翔天っ! 一体何が起こっているんだ!」

 翔天は今起こっていることを簡潔に答えているとき不意に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 「聞こえるかね、帝都バーネリアの兵士と革命軍の兵士よ」

 間違いなくこの声はアルナールの声だった。

 「どこから聞こえているんだ!」

 「・・・・・・あっ! みんな壁の上にいるよ」

 見上げると確かにそこにアルナールが立っていた。

 「どうかねこの光景はとても美しいだろ」

 アルナールの指す方は今なお燃えている城下町で人々の悲鳴が聞こえてきた。

 「アルナールっ! お前がやったのか!」

 遠すぎて顔はよく見えなかったが笑っているのは遠くからでもわかる。

 「やはり来たか・・・・・・あぁそうだ俺がやった」

 「なんでこんなことをしたんだっ!」

 前会ったときとは違い恐怖よりこいつに対する怒りが込み上げてきた。

 「クククッ、そうだよその顔だよぉ~俺が求めていたのは」

 小声で何か言っていたが遠すぎて全然聞こえなかった。

 「おい翔天っ! 今から十分以内に城まで来い、時間通り来なければ俺は更にこの町に火をつけるからな」

 「なっ!」

 アルナールが何のためにこんなことをするかわからなかった。

 「なんでお前は罪のない人を平然と殺せるんだっ!」

 今のが聞こえたかどうかがわからたかった。

 アルナールはもう一度言うと城の方に戻って行った。

 「くっ! 行かなきゃ・・・・・・でないとみんながあの時みたいに殺される」

 一人で行こうとした翔天を龍太が止めた。

 「おい、なに一人で行こうとしているんだよ」

 「行かないとみんなが、みんなが」

 ゴンっと急に頭を叩かれた翔天は動揺していた。

 「いったっ! 何をするんだ!」

 「馬鹿かお前は、少しは冷静になれ一人で行ってあいつに勝てるのかよ」

 返す言葉が無かった。

 「ショウさっき言ったじゃん、一人で出来ないことでも私達四人なら出来るって・・・・・・私達は仲間なんだよ」

 彩姫の言葉でやっと目が覚めた。

 「そうだよねごめん。少し頭に血が昇ってたみたい・・・・・・よし、みんなで行こう」

 「翔天、町の人達は私達が避難させるから安心しろ」

 そう言うやフレデリカは素早く革命軍のみんなに指示をだし、動ける帝都の兵士達にも協力をあおっていた。

 「町の人達はフレデリカ師匠に任せよう」

 「ウンディーネはフレデリカと一緒に町の人達を助け出して」

 少し不安げな表情をしていたがすぐに切り替え町の方に飛んでった。

 「よしっ」

 翔天と龍太はピッーと指笛を鳴らし馬を呼んだ。

 「じゃあ行くよみんな」

 そして翔天達はアルナールの待つ帝都バーネリアの城へ向かった。

 

 

 

 

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