裏切り
「星華大丈夫か! 助けに来たぞ!」
呼び掛けるが返事はない。それ依然にどこか様子がおかしい。
アストロギアの隣に立つ星華はどこも拘束などされておらず、逃げようと思えば逃げれるはずだ。なのにどうして立っているだけなんだ。
いや、逃げないのにはきっと理由があるはずなんだ。なら僕に出来ることは今すぐアストロギアを倒すことだけ。
腰に差してある剣の柄を握り、やや前屈みになる。
「おやおやおやおや? どうしたのですかその剣は~?」
耳障りな小江が聞こえる。だがそれも今だけだ。
「まさかあの状態の剣を直しているとは……さては腕のいい鍛冶師に直してもらったのかな~?」
随分と余裕そうな態度。何か企んでいるのだろうか。ミカの方を見ても特に何も異常はない。ならあの余裕はなんだ。僕の剣が届くことはないと思っているのか。
困惑していく思考に無理矢理、正常に持っていくため頭をかぶり振る。
――考えても無駄だ。
迷いを断ち切り、罠など発動する前に一撃で倒す。そう決めたとき、既にショウは一歩踏み出しアストロギアの眼前まで迫っていた。
剣を抜き、アストロギアの首をはねようとしたとき、キィィィンという金属と金属のぶつかり合う音が聞こえた。
そしてショウは自分の目を疑った。それは自分の剣が触れているのがアストロギアの首……ではなく星華の足に装着されている海瀧リヴァイアだったからだ。
「どうして防ぐんだよ……星華!」