怒りの雷撃
「くっ……無事か龍太!」
後ろでガイラルがそう聞いてきたとき俺は何も答えれる気にならなかった。
あの時、魔族がこの国に攻めてきたのは分かっていた。分かっていたのにミエにこんな怪我を負わせてしまう自分の不甲斐なさに腹が立つ。
「……」
ミエの口元に手を当ててみると微かにだがまだ息はあるようで今ならまだ助かる可能性が十分ある。
「どうした龍太。無事なのかどうかぐらい答えろ」
後ろで文句を言うガイラルを無視して俺はミエをそっと地面に置き、立ち上がる。
立ち上がった俺を見て安心しているガイラルだが今の俺にはミエ以外の奴を気に掛ける余裕などなかった。
「なっ、これは……!」
こちらの様子がおかしいことに気付いたガイラルは近付きミエの状態を見て絶句していた。
「これはどういうことだ! 何故彼女だけがこれ程までの怪我を負っているのだ」
「……あの攻撃をミエがみんなを守るために一人犠牲になったからだよ」
それを聞いたガイラルは言葉も出なかったようで悔しさと後悔そして感謝の目でミエを見ていた。
「ガイラル……ミエの事を頼む」
「当たり前だ。このような者をこんな所で死なすつもりなど毛頭無い」
それを聞いた俺は少しだけ安心し、あの攻撃で大きく空いた壁の外を見詰めた。
まだ魔族は空に停滞しているようで何体かがこちらに二回目の攻撃を喰らわせようと準備をしている。
「おい、龍太! 何処に行くつもりだ!」
ゆっくりと穴の空いた壁に近付く俺にガイラルは怒鳴るが俺は一言だけいい魔法の詠唱に移った。
「俺は空にいるアイツらを倒す」
「なっ……」
「属性解放・雷神!」
全身にパチパチと雷が漂うのを感じた俺はとっておきで危険な呪文を唱える。
「"総てを焦がし、総てを貫く終極の龍よ"」
詠唱が始まると何かしらの危険を察知したガイラルが動ける兵士達に避難するよう命令をだし、自身はミエを担いで部屋の外まで出ていった。
その行為に感謝しながら着実に呪文を唱えていく。
「"愚かな罪人に裁きの時を与えん"」
空にいる魔族も俺が何するのか気になって妨害しようと全員で攻撃準備を始まるがもう遅い。
「"総てを無に還さん"消えろ! "ランペッド・ジャメント"!」
龍太の魔法と同時に放たれた魔族の火炎攻撃。だが龍太が放った魔法……龍の姿を纏った雷は魔族の火炎を全て食べつくしそのまま体全体を使い、魔族を全方位に囲みこんだ。
遠目から戸惑う魔族が見えるがそんなのはもうどうでもいい。俺は雷が囲み終わったのを確認し、右手の親指と中指を使ってパチンと鳴らす。
それが合図かのように雷は中心の魔族に向かって強烈な雷撃を放つ。
魔族の断末魔が聞こえることなく数十秒程度で終わる雷撃。そこには既に魔族の姿は無く、龍太はそのまま地上にいる魔族の殲滅に一人赴いた。