痛みすら感じない神速の技
「おめぇ、よくもおらの仲間をぉ」
隣で倒れる同胞の死に怒りのせいかわなわなと体と震わせていた。
「さぁ、後一人だ早く来いよ」
「人間風情がおらをこけにしやがってぇ。おめぇら皆殺しにしてやるぅ!」
ドスドスと無防備に突っ込んでくる魔族に僕はミカを咄嗟に押し後ろに飛ばすとそのまま左によけ、魔族の右足を剣で斬り注意をこちらに引き付ける。
「人間がぁ!」
作戦通り注意がこちらに移ったのは良かったのだがところ構わずに腕を振り回すせいで反撃に移りにくい。
「くっ・・・・・・単調だけど威力がでかすぎだ・・・・・・」
一撃でも食らえば確実に骨の二、三本は持っていかれる。
「おらおらおらおら!」
この借り物の剣で奴の力を利用してカウンターを狙えるかは分からないがこうなってしまえばもうそれしかない。
「よしいくぞ」
「死ね! 人間!」
トドメと言わんばかりの右ストレートを繰り出きタイミングを計り左に反らし懐に飛び込もうとしたとき、その魔族の背中が急にボウと燃え、魔族の意識は僕から背中の炎に移った。
「あちちち、なんだぁこれはぁ!?」
「この炎は・・・・・・」
もしかしてと思い魔族の後ろを見るとミカが右手を突きだしており手のひらには煙が上がっていた。
「ショウ今です!」
やはりあの炎はミカの魔法だ。きっとミカはこの瞬間をずっと待っていたに違いない。
「ありがとうミカ」
この瞬間を逃さまいと鞘にしまう剣の柄を握る。
「三日月流抜刀術・・・・・・」
「んぉ?」
僕が何かしようとしたのに気づく魔族だが既にもう遅い。魔族が気付いたときには僕は鞘から剣を抜き放ち納めている。
ズルリッ。
一人目の魔族と同様、体と首が切り離された魔族の頭部はドスリと地面に落ち、頭の無い体も遅れて地面に倒れた。
「真空一閃・・・・・・痛みも感じずに安らかに眠ってくれ」
二つの魔族の遺体にそう告げると僕は両手を合せ軽く頭を下げ、しばし目を閉じた。