サラマンダーとの契約
「・・・・・・あれ? 動かない・・・・・・もしかして死んじゃったんじゃ・・・・・・」
倒れてからピクリとも動かないサラマンダーに焦る彩姫だがウンディーネがすかさず説明を入れる。
「安心して、精霊はマナがなくならない限り死ぬことはないわ。あれは単純に傷を回復させてるだけのはずよ」
「そっか・・・・・・それならいいけど・・・・・・」
ウンディーネの説明でホッとするもこのまま回復させたらまた戦うはめになるのではと思ってしまう。
「大丈夫よ、もう戦う必要はないはずだからアルナールを治療してあげないと」
「え、う、うんそうだね」
ホントに大丈夫なのだろうかと疑心暗鬼のなかアルナールのとこまで移動するとウンディーネが実体化しアルナールを治療する。
「く・・・・・・あ、彩姫・・・・・・た、戦いはどうなった・・・・・・」
治療中だというのに上半身を起こすアルナールに彩姫はそっと肩を触り再び横になるように促す。
「大丈夫、もう終わったからアルナールは傷が治るまでそのままじっとしてて」
「彩姫、アルナールは私に任せていいから貴女はサラマンダーのとこに」
「・・・・・・え、なんで?」
急に言われ困惑する彩姫だがすぐに意味が分かりサラマンダーのとこに向かう。
「ウンディーネお願いね」
「ええ、彩姫もしっかりね」
そう言いあうと彩姫はサラマンダーの方に視線を向ける。
既に傷が治ったのかゆっくりと立ち上がってくる。
「・・・・・・」
ウンディーネはもう戦う必要はないと言っていたがどうしても警戒せずにはおれず武器を構えてしまう。
「なるほどこれが今を生きる人間の力か・・・・・・まさかこれほどまでに進化していたとは」
ブツブツと独り言を言うサラマンダーに一歩一歩確実に距離を詰めていく。
「人間よ。名をなんと言う」
「え、はっ! あ、彩姫だけど・・・・・・」
いきなりのことで慌てながら名前を言うとサラマンダーは二回ぐらい小声で私の名前を呟くとスーっと床を滑るように私の目の前まで移動してきた。
「彩姫よ、先の戦いで俺は今の人間を信じてみようと思う。さぁ手を出せ契約の儀をするぞ」
「え、う、うん」
どんどん自分勝手に話を進めるサラマンダーだが契約してくれると言うなら拒否る理由もないから言われるがままに右手を出す。
「では始めるぞ」
「うん」
「我、世界のため、汝のために全身全霊でこの身を捧げることを誓おう」
「私も世界のために人のために、そして精霊のために私は貴方の力で世界を救うことを誓うわ」
二人が契約の言葉を交わすとサラマンダーは下から徐々に姿を消していった。
「どうやら無事に契約出来たようだな」
「うん、なんとかね。後は六人、早く行かなきゃね」
急いで次の精霊のいる場所に行こうとしたときサラマンダーがいきなり姿を現し、彩姫はそれにぶつかり尻餅をついた。
「いててて、どうしたのサラマンダー?」
「こ、この気配は・・・・・・まさか・・・・・・!」
さっきまでの貫禄のある顔とは違い、今のサラマンダーの顔は何かに怯えているように見えた。
「どうしたんだ?」
「分からない。ねぇウンディーネは分かるの」
ウンディーネに訳を聞こうとウンディーネの方を見るとウンディーネもサラマンダーと同じ様な顔をしていた。
「まさかこんなにも生き残りがいたなんて・・・・・・」
「ウンディーネまで・・・・・・一体何があったのよ」
ハッと我に返ったウンディーネだがまだ少し怯えているようで震えながら話し出す。
「ごめんなさい彩姫。じ、実は魔族の大軍がこの大陸に攻め込んできたみたいなの」