人間の力よ
「はあぁぁぁあ!」
アルナールに漂う炎が蛇のように剣に巻き付いた状態でアルナールはサラマンダー目掛けて剣を降り下ろす。
「フンッ、その程度の攻撃で俺を倒せるとでも思ったか!」
自身の拳に宿る炎がボヤァと更に燃え上がりそのまま振りかぶりぎみにアルナールに向かって強烈な右の一撃を叩き込もうとする。
「やっぱり防御じゃなくて攻撃してきやがったな」
「なに?」
アルナールは躊躇することなく剣を降り下ろすと剣がサラマンダーの拳に当たり爆発した。
「ぐはっ!」
辺りに白煙が立ち込めるなか二回、三回と転がりながら吹っ飛ぶアルナールの体にはあちこちに火傷の痕がある。
「火の精霊である俺に無謀なことを。やはり人間とは愚かなものだな」
「じゃあ貴方は今からその愚かな人間にやられるのよ」
突如背後から姿を現した彩姫に虚を付かれたのかサラマンダーはすぐには動くことは出来なかった。
「なっ!」
「ここで決める!」
彩姫の闘志に呼応するように両拳の光が輝きだす。
「煌めく光照!」
「その輝き! まさか纒の力!」
サラマンダーの顔面目掛けての彩姫の右ストレートを後方に一歩下がり首を捻って回避する。
「人間が・・・・・・!」
避けたサラマンダーは反撃の一撃を与えようとする。元々の体格差があるため彩姫も追撃しようにもリーチが足りない。
「これで終わりだ!」
「いいえ、まだよ!」
ジャキンと装着している聖撃グリフィーの先端から十センチ程の刃が出現する。
「しまった! その武器には・・・・・・!」
「そうよ、隠し刃があるのよ!」
光が拳から刃にへと移っていき長さが更に三十センチも伸びる。
「今度は外さない」
「させるものか!」
二人同時に突き出す拳と刃。先に当てようと必死なサラマンダーは肩を入れリーチを伸ばす。後少しで彩姫の顔面に拳が届くその直前で彩姫の刃が胸の中心に突き刺さりサラマンダーの体は動くことはなかった。
「馬鹿な・・・・・・俺が人間なんかに・・・・・・」
「これが貴方が見下す人間の力よ!」
スッと刃を抜き刃を戻すとサラマンダーはドシンと地面に倒れた。