火の精霊サラマンダー
「ここか・・・・・・」
先頭を行く、アルナールがそう言いながら立ち止まるとそこはまるで部屋のように丸く大きな空間だった。
その部屋の中心には全身が鎧かと思うほど筋肉質な赤い肌の大男が居た。
「あれがサラマンダーなのかな」
「そうだろな」
サラマンダーらしき人物に服のように纏う炎に体のサイズとあっていない大きすぎる手。これだけの見た目をしているのなら間違えないだろう。
「・・・・・・人間よ。何しにここまで来たのだ」
部屋全体に響き渡る低く野太い声。それだけであれが自分達が探していた火の精霊サラマンダーだと直感で判断できるぐらいの威圧のある声だった。
「俺達は火の精霊サラマンダー、あんたの力を借りにここまできたんだ」
「何? 俺の力を、だと」
その瞬間サラマンダーが有無も言わさず右手をつき出し、火の玉を放ってきた。
「ウンディーネ!」
「エエ!」
先程と同じ様にウンディーネが火の玉を水の壁で蒸発させる。
「やはりいたのかウンディーネよ」
「そりゃあ私はこの子、彩姫と契約しているんですから」
「何!? 貴様、千年前の事を忘れたのか! 人間の身勝手さゆえに苦しんだことを!」
怒りなが今度は三発の火の玉を放つもウンディーネは冷静に対処する。
「貴方こそいつまで昔の事を引きずるのですか? 確かに千年前の戦いで人は私達を犠牲にしようとしました。ですが彼女は、今の人達は違います」
「そんなの信じられるか!」
サラマンダーの怒気と共に炎の衝撃波がくるもアルナールは自身の炎で、彩姫はウンディーネの水の壁で身を守った。
「おいどーすんだよ、あいつ聞く耳なんてねーぞ!」
「一体どうすれば」
頭の堅そうなサラマンダーをどうやって説得すればいいのか路頭に迷う二人にウンディーネは単純な方法を教える。
「簡単な話、貴方達の力を示せばいいだけのことですわ」
「力を・・・・・・」
「はい。精霊というのは自分より力の強い者に従うもの。だから貴方達の力をあいつに示せればなんとかなるはずです」
このうえなく簡単な方法に二人はニヤッと笑うと武器を構える。
「それなら俺達の」
「得意分野だね」
相手は精霊。しかもウンディーネと同等の力を持っている。だが二人には敗けるというビジョンが全くない。今の二人にあるのは勝って次の段階に進むというビジョンのみ。
「行くぞ彩姫!」
「任せといて」
そう言って目線を合わせると二人はサラマンダーの懐に突っ込んだ。