道がなければ作ればいい
洞窟に入って長い入り組んだ道を進み三十分が経過していた。
「思ってたよりも長い洞窟だな」
「・・・・・・ウンディーネが言うにはサラマンダーがかなりの人間不信だから人が簡単に近付けないようにしているんじゃないかって」
「なるほどな。確かにこれなら普通の人じゃあ近付けないわな」
壁に手を寄り添えながら歩いていたアルナールだったが急に立ち止まるや彩姫の方を向く。
「どうしたの急に?」
「なぁ彩姫、ウンディーネにサラマンダーがどの方角に居るのか聞いてれないか」
「えっ、まぁいいけど・・・・・・」
目を瞑りウンディーネと対話する彩姫は話終わったのかゆっくりと目を開ける。
「ここから延長線上の北東の方角にサラマンダーの気配がするって」
「そうか、それならありがてぇ」
「何をするつもり?」
「まぁ見てなって。属性解放・炎神!」
急に属性解放術を発動させたアルナールは周囲の炎を自身の右手に集め大きな火の玉を作り出していく。そのあまりの熱さにアルナールと彩姫を繋ぐロープが焼ききれた。
「待ってアルナール。貴方まさか・・・・・・」
「そのまさかだよ。こんなまどろっこしい迷路を素直に進んでたまるか」
そうアルナールはサラマンダーの居る位置までこの火の玉で壁を破壊するつもりなのだ。
「でももしサラマンダーに当たったらどうするのよ」
「知るかよそんなこと。それにあいつは火の精霊なんだろ? ならケガとかはしないだろ」
「そんな無茶苦茶な」
呆れ果てる彩姫を無視して右手に集めた火の玉をボールを投げるように構える。
「そぉーりゃ!」
勢いよく投げた火の玉は目の前の壁を次々と壊していき真っ直ぐの道を作っていく。
「ほら、これで進みやすくなった」
「そ、そうだね」
道が出来たことに満足したアルナールは早速行こうと足を踏み出すと先程の火の玉がこちらに向かって戻ってきた。
「は!?」
「くっ! ウンディーネ!」
咄嗟に前に出た彩姫はウンディーネの力を使い火の玉を蒸発させる。
「何でアルナールのが戻ってきてるのよ」
「いやあれは俺のじゃない」
「えっ?」
一体どういうことなのか聞こうとする彩姫だがそれより早くにウンディーネがあの火の玉について説明した。
「あれってサラマンダーの炎なの?」
「ああ間違いねぇ。俺が出したのより遥かに威力の高い物だったからな」
「えっ、てことはアルナールが出した火の玉を攻撃されたと勘違いされてサラマンダーが反撃してきたってこと?」
「ま、そういうことだな」
あっさりと言うアルナールにイラッとした彩姫はアルナールの腹に軽くパンチを入れる。
「ぐふっ! 何しやがる」
「それはこっちのセリフよ! これからサラマンダーと契約するってのに警戒させて!」
「知るかよ」
ギャーギャーと口喧嘩する二人だがそんなことをしても時間の無駄だと思ったアルナールはため息をつくと彩姫を置いて進んでいく。
「何処に行くのよ」
「んなのサラマンダーのとこに決まってるだろ」
「でも私達はサラマンダーに警戒されてるのよ。そんな状態で行ったところで・・・・・・」
「それでも行くしかねーんだよ。俺達には時間が無いのは分かってるだろ」
それを言われると返す言葉はなく黙り込んでしまう。
「・・・・・・そうだねそうだよね。ごめん」
「謝らなくていいから早くいくぞ」
「うん」
同時に走り出す二人だが彩姫は目的地とは逆方向に向かっていた。
「だあー! 何でお前はここでも道を間違えるんだよ」
「あれ?」
彩姫の襟を掴むとアルナールはそのまま彩姫を引きずってサラマンダーの所まで向かっていく。