戦いの理由
数十分前、俺とミエは謁見の間に入ると壁際に二十人近くの兵士が並び部屋の一番奥に玉座に座る一人の男性がいた。
「我との謁見を希望したのは貴様らか」
短く切り揃えられた紫色の髪に一睨みで全てを従えてしまえそうな鋭い眼光。逞しい肉体が服の上からでも分かるぐらいの体つき。あれがこの国の王様、ガイラル王なのか。
「はい! 私達はガイラル王にお渡ししたいものがあり謁見を希望しました」
膝間付き昨日の夜ミエと考えた台詞の一つをスラスラ言うと俺は懐から二枚の親書を取り出す。
「む? それは」
「これは帝都バーネリアの王、カール陛下とライナー王国の王、レオンニャルト王の親書です」
ガイラル王はそれを聞くと近くの兵士に目で合図を送るとその兵士は俺の近くまで来ると、二枚の親書を取りガイラル王のとこまで持ってくる。
「・・・・・・」
二枚の親書を読み始めるガイラル王。このまま素直に了承してくれれば助かるのだがどうだろうか。
「なるほど。ここ最近、この国で感じる妙な気配は魔族が原因だったのか」
読み終わった親書を先程の兵士に渡すとガイラル王は目線を俺らの方に向ける。
「貴様らがここに来た目的は分かった。つまり貴様がこの世界を救う予定の英雄の一人で世界から争いをなくすために魔族討伐に協力してくれということだな」
「はい」
とりあえず親書の内容を把握してくれたようで後はそれを了承してくれるかどうかだけだ。
「・・・・・・貴様名前は何と申す」
「龍太と言います」
「そうか龍太か・・・・・・」
それからしばらく考え込むとまた近くの兵士に目線を送るとその兵士はどこかに行き、数分後大きな刀を手に持ち戻ってきた。
「龍太よ。我はまだ貴様を英雄だとは思っていない」
「え?」
ガイラル王は兵士の持ってきた刀を持つと玉座から立ち上がり鞘から刀を抜き放つと銀色に煌めく刀身が現した。
「貴様が英雄だと言うならばここで我と戦え。それで貴様が勝てば我は貴様を英雄と認めいくらでも力を貸そう」
そう言って剣先を俺に突き付ける。まさかここの王様が割りと脳筋思考だとは思わなかった。だが下手に頭を使わなくていい分、単純でこちらのほうが俺もいい。
「分かった。王様がそこまで言うなら力で証明してみせますよ」
背中の槍を取り、先を王様に向ける
「私も戦うわ」
「ミエ気持ちは分かるがさすがに二対一は・・・・・・」
「構わん。それに貴様は回復術師だろ? いくらでもサポートをするがいい」
見ただけでミエが回復術師と気づき更には平然と二対一を認めている以上、ガイラル王はかなりの強者に違いない。
「ならこちらは二人がかりで行きますけど後悔はしないでくださいよ」
「ふん、さぁ何処からでもかかってこい!」
こういった理由で俺、ミエはこの国の王様であるガイラル王と戦っているのだった。