嫌な気配
太陽がてっぺんまで昇り、昼になる合図。僕は特訓を一旦止め、ミカと一緒に心結の家に戻る。
昼になったにも関わらず心結はいっこうに帰る気配がなかったがリビングには僕らの分であろう昼食が置かれていた。
「わざわざこうして作ってくれているなんて・・・・・・もしかして僕らが思っているより材料を採るのってかなり時間がかかるんじゃ・・・・・・」
今になって心結の事が心配になるも場所が分からない以上、おとなしく待つしかない。
「私が言うのもあれだけどたぶん心結は大丈夫だと思いますよ。土地勘もあるようですし、それに何度も行かれているようなのでよっぽどのことが起きない限り大丈夫じゃないでしょうか?」
「そうだな。ミカの言う通りだな」
土地勘のない僕らが心結を追いかけに行ったところで迷って逆に迷惑をかける可能性の方が高い。それならここで心結の帰りを信じて待つ方が良いに決まっている。
「よし、なら心結が作ってくれた昼食でも食べるか?」
「はい!」
お腹が空いて早く食べたいという気持ちを抑えながら二人は椅子に座り、いざ食べようとしたときだった。
「きゃぁあああッ!」
「ッ! 今の悲鳴は」
慌てて外に出ると近くには人の気配は感じない。だが森の中から嫌な気配が漂っているのが感じる。それに今の悲鳴は心結の声。明らかに何かが起こっているのは間違いない。
「ミカは家にいて。僕は心結を助けにいくから」
それだけを告げて剣を持って森に入ろうとした僕をミカが止める。
「ううん私も行く」
「で、でもな・・・・・・」
どうにかして引き留めようとしたがミカからは絶対に一緒に行くんだという強い意思を感じ、引き留めるのは無理そうだった。
「・・・・・・しょうがないな。絶対に僕の側から離れないでよ」
「はい!」
ミカが笑顔で頷くと僕ははミカの足の速さに合わせて心結の悲鳴が聞こえた場所まで走っていった。