悪魔の男アルナール
アルナールが帝都の王室についたときには既に日はくれていた。
「やっときたかアルナールよ」
玉座に偉そうに座るのは現在この国を支配している皇帝陛下だった。
「陛下、私を呼んだ理由はなんでしょうか」
アルナール少なからず陛下に対して怒っていた。
自分がここまで来る間に捕まえた神器使いが脱走しただけでなく、拠点も破壊されてしまい自分を呼んだ陛下に怒っていた。
「貴様には我の護衛をしてもらうためここに呼んだ」
「それだけのためにですか。私が護衛しなくても他の兵だけでも十分ではないですか」
これだけのために呼ばれたとあればアルナールはもう陛下を生かすつもりが無かった。
アルナールがわざわざ軍に入っている理由はある目的があるためでそのために皇帝陛下を利用するつもりだったがその価値すらもうなかった。
「いつ神器使いの者が我を襲ってくるか分からぬからなお前ほどの腕のたつ者は他におらぬからな」
潮時だ。
陛下は既に自分のことしか頭にない。
アルナールはゆっくりと鞘に入っている剣を抜いた。
「ア、アルナールっ、それは一体なんの真似だ!」
「もうあなたがここにいる理由がなくなったそれだけのことです」
アルナールはじわじわ陛下との距離をつめていった。
「貴様、裏切るつもりか!」
「元々私は、あなたに仕えているつもりはありませんでしたからこれは、裏切り行為にはなりません」
近づくアルナールに陛下は慌てて玉座から立ち後ろに逃げたがアルナールの方に出口があるためこの部屋からはにげれなかった。
「あなたならやってくれると思っていたんだがとんだ期待外れだった。最後ぐらいはいい顔して死んでくれるよなぁ!」
アルナールは既にあと一歩のところまで陛下を追い詰めていた。
「兵士達! 今すぐこの裏切り者を始末しろ!」
だか、兵士達が来る気配がなかった。
「何故だ、何故来ないんだ。役に立たない兵士どもが!」
「もうお前の言うことを聞く兵はどこにもいねーよ」
アルナールはこの時のためにこの軍に入ったときから兵士達一人一人に洗脳術を施していた。
「まっ、まさかお前!最初から我を殺すつもりで・・・・・・」
「はぁ~残念だな。そんな顔じゃあ俺は満足できないが、まぁメインディッシュ前の前菜と思えば悪くないな!」
「ま、待てっ・・・・・・」
陛下の言葉を聞かずにアルナールは陛下の首をはねた。
陛下の体はまるで、操り人形の糸が切れたように倒れた。
アルナールは剣についた血を払うと、近くにいる兵士を呼んだ。
「お呼びですかアルナール大佐」
「今日から、俺がこの国の新たな皇帝陛下になる。だからお前は今から他の兵士達と共に戴冠式の準備をしろ。九時からできるようにしとけ」
「分かりましたアルナール陛下、では」
アルナールの指示を受けた兵士はすぐさま出ていき準備に取り掛かっている。
兵士がでてアルナールは頭と体が離れた元陛下を一瞬見てその遺体を燃やした。
「炎はいいよなぁ。どんな奴を燃やしてもその赤く揺らめく美しさは変わらないからなぁ」
アルナールは玉座に座り炎を見ながら七年前のことを思い出していた。
あのとき殺したはずの餓鬼がこの世界に転生しさらには神器なんていう、とてつもない力を手にいれやがった。
思い出すだけで興奮が止まらなかった。
「あぁ~あの時の怒りがすべての感情を上回った瞬間の顔は最高だったなぁ~」
だが、先程会ったときの恐怖に怯える顔を思い出すとその気持ちが一気に萎えてしまう。
「俺を見たら復讐の気持ちでいっぱいになるとおもったんだがな」
だが、アルナールは知っていた翔天がどうやれば怒るのかを。
「あの怯えた顔が俺の求める顔になる瞬間が待ち遠しいぜ。アハ、アハハハハ」
今、帝都でとんでもない悲劇が起きようとしていることに翔天達はまだ気づかなかった。