プロローグ
一発ネタです。内容が内容なので、タイトルとあらすじを読み嫌悪感を持った方は読まないことを推奨します。
ご意見、ご感想をお待ちしております。
俺はトイレに篭もる時間が長くて会社をクビになった。
いや確かに酷い時はトイレで仕事している状態だったけど、クビになるとは思わなかった。
次の会社どこにしようかな。トイレが綺麗で便器が美しいところが良いな。
おっと、その前に失業保険申請しないとな。
そんなことを考えていたために周囲の警戒が疎かになって、トラックに轢かれてしまった。
腹をタイヤに二度踏まれて、体を二つに捻じ切られた。
ああー、いてぇよ。
ああー、死ぬときはトイレだと決めていたのに...。
次に目を覚ますと、おじいちゃんが一人真っ白な空間に佇んでいた。
「ワシ、神じゃよ」
「あ、どうも。田中礼二です」
「死んでしまったことは理解しているかの?」
やっぱり死んでしまったのか。
いつ死んでもいいと思っていたけど、終わってみれば名残惜しいものだった。
「実は他の神に魂はないか、と求められての。お主を差し出すことにしたのじゃ。つまりお主が死んだのはワシのせいじゃ。殺した代償に可能な限り要望を聞くぞ」
「いや、死んでるんだから意味無いじゃん」
「おぬしは異世界に転生することになっておるのだ」
それはすごく良いな。
「だったら便器になりたい!」
「...本当にそれでよいのか?」
「もちろん!」
「わかった。では寝ると良い。次に目を覚ますときは異世界で便器じゃ」
おおー!
テンション上がってきた!!
夢がかな、っ、た...。
――――――
目を覚ますと俺は便器になっていた。
(あれ、何で意識があるんだ!?)
貯水タンクの水が震える。
(ん?)
水の振動が言葉として伝わる。
(まさかお主、正真正銘の便器になりたかったのか?)
(神様ですか! そうです。僕の望みは正真正銘、意思なんてない便器です)
(そうであったか、すまぬ。それは無理じゃ。ワシ言ったよね。魂とか転生とか)
そうだった。
何でも願いが叶うと言われてそればかりに頭がいってしまった。
(どうすればいいんですか!?)
(重ね重ね悪いが、すでに転生は済んでおってワシの力を行使できないのじゃ。こうやって話をしていられるのですらあと少しなんじゃ)
(それは困ります!)
(無心じゃ無心。その域に到達すれば良いだけじゃ。あ、もう時間が)
(お、おい)
(それでは達者での)
...。
...。
(おーい)
...。
...。
(まじか)
いつまで待っても返事はなかった。
俺は神様に願うのを諦める。考えてみれば便器になれたのだ。
最善ではなかったけど次善の結果だと思って、ここは喜んでおくべきだろう。
よし。今日から便器人生をはじめよう。
無心を覚えて便器〈完全体〉になることを目標にがんばって行くぞー!!